K a n o n 
ANIME REVIEW LETTERS
タイトル・サブタイトル・放送日時
Kanon
Kanon #01/2006-10-06
<白銀の序曲〜overture〜>
雪の大地を札幌に向かう汽車。 駅で一人の少女を待つ佑一。 「雪、積もってるよ・・・」と少女が声をかける。 2時間も待たされている。 ごめんね、と言いながら、佑一の雪を払う。 「7年ぶりだね・・・」  「そろそろ行こうか。 いくぞ、名雪」

夢。 夢を見ている。 毎日見る夢。 終わりのない夢。 赤い雪。 赤く染まった世界。 夕焼け空を覆うように、小さな子供が泣いていた。 せめて流れる涙を拭いたかった。 だけど、手は動かなくって、頬を伝う涙は雪に吸い込まれて・・・ 見ていることしかできなくて、悔しくて、悲しかった。 大丈夫だから。 だから、泣かないで・・・  約束だから・・・ それは誰の言葉だっただろう・・・ 夢が別の色に染まっていく。 うん。約束だよ。

朝。 佑一が目覚めると、名雪がなにやら騒いでいる。 そして、廊下に出ると、名雪が制服を探して彷徨いていた。 名雪は部活に行くらしい。 100m7秒で走れば間に合うよと良いながら、門を飛び出す名雪を呼び止め、佑一は後で街の案内をしてほしいと頼む。  名雪が学校へ行った後は、佑一は雪かきを手伝う。 佑一は小さい頃は、この街に良く遊びに来ていた。 そして、今回は7年ぶりだった。 
名雪が帰ってくると、街に出かける。 「佑一は、この街で暮らすんだもん。ずっとずっとね・・・」と名雪が言う。 「ずっとかどうかは分からないけど、高校を卒業するまでは、ここで暮らさないといけないからな」と佑一。 
そして、街を見下ろせる丘に登る。 しかし、佑一には、小さな頃の記憶があまり残っていないらしい。 そんな時、茂みから狐が出てきた。 それを見て、名雪は おいでー と言いながら近づくが、逃げられてしまった。 
帰りに、スーパーで買い物をするという名雪。 佑一は迷いそうだから、外で待っていると言った。 「昔、同じようなことがあったような気がするよ。」と名雪が言う。 7年前にも、この景色を見ていたのだろうか・・・  その時、「どいてー!」と叫びながら、女の子が佑一に激突してきた。 そして、女の子は佑一の手を引いて、走り出した。 そして、喫茶店に逃げ込み、「追われているんだよ。 ぼく。」と真剣な表情で話し出す女の子。 窓の外に、追っ手らしき人影を見ると、 テーブルに蹲って隠れようとする。 「アイツに追われているのか? その紙袋と、関係があるのか? なんか、すげぇ人の良さそうなオヤジだ。」 「たいやき屋さんだよ。」 「どうして、たいやき屋がお前を追いかけてくるのか?」  「すごくおいしいたいやき屋さんがあって、たくさん注文したところまでは良かったんだけど、、、お金を払おうと思ったら、財布がなくって、どうしようかと思ってたら、横にネコくんがきて、たいやきをつまみ食いしようとして、おじさんが怖い顔で怒鳴って、ぼくも驚いて逃げ出しちゃったんだよぉ。。。」  と事の経緯を説明した。 「それって、一方的にお前が悪いんじゃないのか?」と佑一。 「他にも、理由はあったんだよぉ・・・ 話せば長くなるんだけど。 複雑な話なんだけど・・・ とってもお腹が空いていたんだよ。」 「それだけか?」 「それだけ・・・」  そして、佑一は女の子の手を引いて、たいやき屋さんのところに連れていった。 「俺が、お金を払うから、一緒に謝るんだ!」 「うぐぅ」
「ところで、お前。 背中の羽は何だ?」と佑一が女の子のリュックに付いている羽を指さして言う。 「羽?」そういうと、自分の背中を見ようとして、くるくる回りだした。 「・・・首だけ回せばいいじゃないか」と半分呆れてる佑一。  「薄々は感じていたのだが。。。 お前、変なヤツだなw」 そして、別れ際、「ぼくは月宮あゆ。きみは?」 「相沢佑一」  ・・・相沢佑一、聞き覚えのある名前だった。 「相沢くん・・・? また会えると良いね。 それじゃ、また会おうね。約束だよ。」そういうと女の子は走って行った。 
気づけば、すっかり名雪の事を忘れていた。 ちょっとご立腹の名雪さん。
翌日から佑一も学校に通う。 新しい街での新しい生活。 そんな冬の一日が、ゆっくりと暮れていく。 意識が眠りにとけ込む間際、一人の少女の姿が脳裏を掠めていた。 それが誰だか分からないまま、俺は、眠りについた・・・

7年前の事を夢に見た。 今日の光景と似ている。 名雪は一人スーパーに入り、佑一は外で待っている。 そんなとき、泣きじゃくる女の子が佑一にぶつかってきた。 その子の名前は、そのとき、あゆあゆ と呼んでいたような気がした・・・

次回 
<雪の中の入祭唱〜introit〜> 



Kanon #02/2006-10-13
<雪の中の入祭唱〜introit〜>
夢。 夢の中にいる・・・ 微睡みの中、ただ一つだけのことを祈る。 目を閉じて、再び目を開けたとき、違う風景が見えますように、と・・・

「あーさー。 あーさーだよぉ。 あさごはんたべてぇ、がっこういくよぉ」 名雪ボイスの換えって眠くなりそうな目ざま時計で起きあがる佑一。  その時、隣の部屋から、猛烈なサイレンのような音が聞こえてきた。 大量の目覚まし時計が、一斉になり始めた。 それでも、起きれない名雪えお、佑一が揺すり起こす。 「おはよーございまふぅ・・・」
佑一は、今日から学校。 トーストの朝ご飯を食べる。 名雪ママが佑一にジャムを勧める。 甘くないというジャム。 一口、食べた瞬間に、凍り付く佑一。 「・・・これ、何のジャムですか? すごく不思議というか、複雑というか、独創的な味がするのですが・・・」 「秘密です。」 「・・・これ、ジャムなのですよね」  学校に行こうと、名雪が声をかけてきた瞬間に逃げ出す佑一。 ちょっと残念そうな名雪ママ。 逃げようとする佑一を呼び止めて、「今夜はおでんよ」と微笑む。
のんびりと学校へ向かう二人。 「一緒のクラスになれると良いね」と名雪。  そして、教室に入ると、「佑一〜」と名雪が手を振っていた。 至って、普通な自己紹介をして、自分の席に着く。 
「そうだ。名雪、俺がお前の家に居候していることは内緒にしておけよ」と佑一。 「ごめん。 もう、みんなに言っちゃった。」と名雪が振り返った瞬間に階段を踏み外し、踊り場にいた舞と佐祐理に激突してしまう。  そんな3人を見下ろす佑一に、「何?」と舞が言う。 「いや・・・」と佑一。 
名雪は部活へ、佑一は学校の中を見て回ることにした。 「この学校、広いから、迷子にならないようにね」と名雪。  「・・・迷ってしまった。。。 ○| ̄|_ なんでこんなに広いんだよっ!!」 そして行き着いた先は屋上。  屋上の豪雪に埋もれ、「駄目だ。遭難しちまう。」 手当たり次第に扉を開いていく。 完全に挙動不審者。 そんなとき、香里が声をかけてきた。 「美坂香里・・・ クールな女だ。」
佑一は、学校の帰りにおでんのネタを買いにスーパーへ向かう。 そして、また「どいて。どいてぇー」と、どこかで聞いた声が近づいてきた。 とっさに振り返って、猛烈に突進してくるあゆの侵入ルートから逃れようと、左に交わすが、 あゆも左に入ってきた。 案の定、激突。 「そうだ! 逃げないと!! とにかく走って!!」と佑一の手を引くあゆ。 「何で二日連続で逃げて居るんだよ?」 「また、たいやきを買おうとしてたら、財布が無いことに気づいたんだよ。」  「そしたら、またネコが来たのか?」 「ううん。今度は野良犬くん」 それに驚いて、また逃げてきたという。 結局、たいやきを一緒に食べながら歩く。 「また、誤りにいくからな」と佑一。 
しばらく一緒に歩くと、見覚えのない道にでてしまった。 「なんだ?お前も知らないのか? お前が知らないのに、一昨日、引っ越してきたばかりの俺が知っているわけないだろ」と佑一が言う。  「もしかして、相沢佑一くん? 昨日、会ったときから、もしかしたらって思ってた。 名前一緒だし、変な男の子だし。 帰ってきてくれたんだね。 ぼくとの約束を守ってくれたんだね。」とあゆが足を止めて言った。 「あゆ。。。か?」 佑一も思いだしたようだった。  感動の再開を分かち合おうと、佑一に抱きつこうと走り出すあゆ。 しかし、条件反射的に、佑一は逃げてしまった。 そのまま、あゆは木に突進して激突。 「だいじょうぶか・・・ 今のは、全面的に俺が悪かったかもしれない・・・」 「避けたー。佑一くんが避けたー」とあゆが暴れる。  そして、その衝撃で、木の雪が落ちてきて、通りがかりの女の子に落っこちてきた。 ご立腹のあゆさん。 「ぼくはわるくないもん!」 「大丈夫ですか?」と女の子に声をかける佑一。  「コイツはどうかは分からないけど、俺は善良な一般市民です。」と佑一。 「ぼくだって、善良な一般市民だよ。」 「善良な一般市民は、食い逃げなんてしないぞ!」 「あれは!!」と言いながら、散らばってしまった物を一緒に拾い集める。 
「ずいぶんと一杯買ったんだね。」とあゆ。  「私、あまり外に出ないので、まとめ買いをするんです。」 
「お金を払っているだけ、立派だ。」
「佑一くんの言うことを聞いていると、ぼくが悪者のように聞こえる。 ぼくは良い子だよ。」
「良い子は食い逃げ何てしない。」
  「うぐぅ・・・  そうだ昔のこと、思い出した。 佑一くんって昔からこんな男の子だよね。 これも、何かの運命かもしれないね。」
「いや、ただの腐れ縁だと思う」
「ねーねー。 きみって何年生?」
「1年ですけど・・・」
「じゃ、ぼくの一つ下だね!」
「え! あゆって、俺と同じ学年だったのか!! 俺はてっきり・・・」佑一が固まる。
「てっきり何かな?」
あえて口にはしない・・・
「じゃ、これで」と女の子が言う。 
「いや! 待ってくれ!!」と佑一が呼び止める。 「帰り道を教えてくれ」
なんとか、知っている所に出る。 そして、たいやき屋さんに誤りにいく。 
帰り道、「また会おうね。 約束。 そうだ昔みたいに指切りしようよ」と言って、あゆが手袋を外す。 「ゆーび切ったっ。 じゃぁねぇ!」と手を振って走って帰っていくあゆ。 
すると、また佑一の背後から別の女の子が迫る。 「やっと見つけた・・・ 覚悟ー!!」と叫び殴る蹴るの暴行の予定だったが、お腹が空いて動けないーっ と言って道端に倒れ込む。

次回 
<記憶にない組曲〜partita〜> 



Kanon #03/2006-10-20
<雪の中の入祭唱〜introit〜>
夢。 これが夢だったことに気づいたのはいつのことだろう。 ずっと昔? それともほんの数分前? それも答えさえも夢の中にかすんでしまう。 流れているのかもわからない時間の中で、いつか目覚める日を夢見て・・・

佑一が女の子を"おんぶ"して戻ってきた。 玄関に来た名雪は、佑一の背中に乗っかっているモノを見て「大きなおでんだね」と言う。 「お前はコレがおでんに見えるのか?」 そして名雪ママも「あら。大きなおでんだね」
布団を敷き、女の子を寝かせる。 「どういう事情なの?」「歩いてたら、一方的に殴ってきて、いきなり気絶したんだ」「それじゃ、端折りすぎだよ・・・」 起こそうと、佑一が女の子の耳元で、「ご飯だぞー!」と叫ぶ。  すると、布団から飛び起き、「ごはん! どこ! どーこー!」と暴れる。 
そして。4人でおでん。 「で、お前誰なんだ?」「覚えてないの。記憶喪失っていうのかな? でも、あんたの事は怨みがあるから覚えているの!」夕食の後、財布の中から、一人だけで写したプリクラが出てきた。  それは、記憶をなくした後に、みんなが撮っているから撮ってみたプリクラだという。 「よし。名雪。 警察を呼べ。」と佑一。 それを聞いた女の子は、名雪の背中に回り込んで、佑一が記憶をなくした唯一の道しるべなんだからここに居たい、と訴えた。  「どっちにしろ、お前みたいな危ないヤツとは一緒に入れるか! 却下だ却下!」 しかし、名雪ママは「了承」。 喜ぶ女の子。 とりあえず、明日、警察に行って、行方不明の女の子の届け出がないかどうか調べてくることになった。 
「同居することになったんだから、名前くらいは思い出して貰わないと・・・」 「名前? あぅー、思い出せない。」 佑一は神とマジックを持ち出し、 「とりあえず、お前の名前を決めてやる。 殺村凶子 さつむらきょうこ〜 その凶悪な性格にピッタリだろ!!」  「がんばって、とぉーっても可愛い名前を思い出してみせるもん!」
その日の夜、なにやら物音が聞こえてきた。 気づいた佑一が、1階に下りてみると、凶子が冷蔵庫を漁っていた。 そして、ハムを見つけて嬉しそうにしている背後に佑一が回る。 こんにゃくを摘み上げ、凶子のパジャマの首筋からこんにゃくを滑り込ませる。  驚いた凶子は、暴れまくる。 その騒ぎに気づいた名雪親子も下りてきた。 「しょうがないわね」と言う感じで、名雪ママが夜食を作ってくれた。
翌日、学校。 窓の外を見ると、じっとこっちを見ている女の子がいた。 昨日、あゆが雪をぶつけた女の子に似ている。昼休み、下に降りてみる。 「帰っっちまったか・・・」と辺りを見回す。  すると、木の陰から、「こんにちは。どうしたんですか?」と声をかけてきた。 
「学校に部外者がいたから、来てみたんだ」と佑一が答える。  「わたし、部外者じゃないですよ。 この学校の一年生です。」と女の子が言う。  女の子は、あまり身体が丈夫ではなく、学校を休んでいるらしい。 「こう言うことを聞いても良いのかわからないけど、何の病気なんだ?」と佑一が聞く。  「風邪です。」 「あ? もっと難しい病名が出てくるのかと思った。」 「じゃぁ。 流行性感冒でもいいですよ。」 「同じだろ。」 
女の子は、人と会うために今日はここに来ているらしい。 しかし、その人の、名前や顔を知らないという。 学校を休んでいるのに、こんな所にいては、怒られてしまうと言って、女の子は歩き出した。  「俺。相沢佑一!」 「わたし、栞です。」 「苗字は?」という佑一の問いには答えず、軽く会釈をして帰っていってしまった。
夕方、佑一が街を歩いていると、また、背後からあゆが飛びかかってきた。 それを振り払う佑一。 「あー! 佑一くんが捨てた! うぐぅ。」 「うぐぅ〜」 「まねした!」 「うぐぅ・・・」
あゆは、何か探し物をしているらしい。 とても大切な物。 でも、思い出せない。 はやく見つけないといけない物。 いつ、どこで落としたのかもわからない。 街中を一緒に回る。  夜になってしまった。 「大事な物はありそうか?」 首を横に振るあゆ。 「探していれば、いつか見つかるよ。」とあゆが答える。 「そう言えば、携帯とか持ってたら、番号、教えてくれないか?」と佑一が聞くが、 「けーたいって何?」とあゆ。 「おまえ、それ、本気で言っているのか? 携帯電話のことだ。」 「それって、電話の親戚?」 「そうだ。」 そして、あゆは、今日はもう帰るね、と言って、ぴょんぴょん走っていく。

記憶のない女の子。 何を落としたのか覚えていないあゆ。 7年前のことを思い出せない俺。 この街には、記憶を消す魔法でもかかっているのか・・・

佑一が家に戻ると、記憶のない女の子が飛びかかってきた。 名前を思い出したという。 「沢渡真琴。 良い名前でしょ。 うらやましい名前でしょ。 あーあ。 佑一とかいう名前じゃなくて良かったぁ」  次回 
<休日の奇想曲〜caprice〜> 



Kanon #04/2006-10-27
<休日の奇想曲〜caprice〜>
夢。 夢には終わりがある。 どんなに楽しい夢にも、どんなに怖い夢にも。 暖かい布団の中でお母さんに揺り起こされて、夢は途切れる。 ずっとずっと変わらない朝の風景。 だけど今は・・・ 夢に終わりが無くなったのは、何時からだろう・・・

泣きやまないあゆあゆに困り果てる佑一。 「何で泣いているのか言ってくれよ・・・」 泣きやまないあゆあゆに、そろそろ帰るから、と言おうとすると、あゆあゆのお腹が鳴った。  「腹、へってるのか? 何か好きな食べ物とかあるか?」 「・・・たいやき」とあゆが呟く。 そして、しばらくして、佑一が鯛焼きを買って戻ってきた。  ふたりでベンチに座って、たいやきをたべる。 「・・・で、何で泣いてたんだ?」 答えないあゆ。 「答えたくないのなら、今日は聞かない。 じゃ、俺、帰るから。あゆあゆ」というと、あゆは佑一の袖をつかんで、 「ぼく、あゆあゆじゃない。 また、食べたい」 「たいやき? また食べよう」 「指切り・・・ 指切り」とあゆが指を出す。 「指きった!」と明日も会うことを約束する。 別れ際、あゆあゆは振り返って、 「あの・・・ばいばい」と小さく手を振る。 
そんなことを布団の中で思い返していた佑一。 そのとき、真琴が佑一にこんにゃくの仕返しをしようと忍び込んできた。 しかし、失敗。 失敗して暴れる真琴。 「あぅ〜」 
朝、玄関に山積みされた引っ越しの段ボールにため息を付く佑一。 不機嫌そうに真琴も起きてきた。 「あぅ〜」と言って、自分の塒に戻っていった。 その後。佑一は、弁当を忘れた名雪のために学校に向かった。  体育館で名雪は、陸上部の部長として頑張っていた。 佑一はしばらく、名雪の練習を見たあと、体育館を後にした。 帰り道、香里にであう。 「お前も部活か?」 「私は、ちょっと家にいたくないだけ・・・」と答える香里。 親とでもケンカしているのだろうと思う佑一。 
街を歩いていると、名雪ママの秋子さんが米袋を担いで近づいてきた。 荷物を替わりにもってあげる佑一。 そして、また、あゆが駆け寄ってきた。 と思ったら、また転んだ。 「あら、お知り合い?」と秋子さん。  「いえ、全然知らない女の子です」と冗談ぽく言う佑一に、「うぐぅ」と怒るあゆ。 そして、例の如く、あゆはたいやきの入った紙袋を握りしめていた。 「また、食い逃げしてきたのか?」という佑一に、 「違うよ! これは、さっきたいやき屋のおじさんがくれたの!」とあゆ。 「コイツは、月宮あゆです。 俺の知り合いです。」と秋子さんにあゆを紹介する佑一。 「月宮あゆです。 よろしくお願いします」と頭を下げるあゆ。  「え? 月宮・・・あゆ・・ちゃん?」と何か覚えのあるような表情を一瞬浮かべる秋子さん。 しかし、「私の気のせいですね」と秋子さん。
あゆは、佑一の引っ越しの手伝いをするために、名雪の家に行くことに。 そして、玄関を入ると、階段の上の方で、真琴がこっそりこっちを見ている。 「ぼく、月宮あゆです。 よろしくね。」 「沢渡真琴・・・ よろしく」  結局、あゆと真琴は佑一の手伝いをすることになった。 やっとの事で荷物を運ぶ真琴。 座り込む真琴に、あゆは、ポッケに入れていたたいやきの紙袋を取り出し、「食べる? たいやき!」たいやきをひとつ真琴にわたす。  「あまーい」と一口食べて微笑む真琴。 そして、どんどん引っ越しが片付いた。
一段落して、カステラでおやつ。 佑一とあゆが楽しそうに話をしているが、真琴だけは疲れたから後で食べるといって、自分の部屋に引き籠もってしまった。 そして夕方、あゆが帰る時間。 結局、真琴は、降りてこなかった。  あゆが玄関から出て、振り返ると、2階の窓越しに真琴が見えた。 手を振るあゆ。 真琴も手を振る。 明るく笑うあゆに、真琴も笑顔になる。
夜、名雪がノートを返してほしいと佑一の部屋にやって来た。 しかし、ノートは学校に置いてきてしまったらしい。 そのノートが無いと、宿題が出来ない。  「困るよぉ。 宿題が出来ないと、佑一くんも困るでしょ?」と名雪いう名雪だったが、「俺は、そう言うことに対しては超越してるから」といって、真面目に取り合わない佑一。 「私は、超越してないよぉ」と名雪。  そして、結局、佑一は夜中に学校に取りに行くことになった。 
満天の星空を眺め学校に着く。薄暗い廊下を歩いていると、人影が見えた。  次回 
<魔物たちの小夜曲〜serenade〜> 



Kanon #05/2006-11-03
<魔物たちの小夜曲〜serenade〜>
夢。 夢を見ている。 誰かを見ている夢。 遠くに聞こえる雑踏の中で、小さなベンチに座って、たったひとりで来るはずのない人を何時間も、何日も・・・そして何年も・・・

「よぉ・・ 何やってるんだ? 演劇部の稽古か?」佑一が剣を持って夜の学校にいた舞に声をかける。 舞は、無言のままこちらを見る。 そして、佑一の背後で物音がする。  その瞬間に、舞は剣を振りかざし、空を斬る。 「私は、魔物を斬る物だから・・・」と舞が言う。
ノートを取って戻ってきた佑一。 佑一は名雪にノートを渡す。 そして、冷えた身体を暖めようと、風呂に入ろうと・・・ 扉を開けると、そこには、真琴が湯船に浸かって、こっちを見てる。  しばらくの沈黙の後、「よぉ。 考え事をしていて、お前に気が付かなくってさぁ」と佑一が言う。 そして、「まぁ、ここで会ったのも何かの縁だし、一緒に入ろ・・・」と言いかけたところで、真琴の悲鳴がこだまする。  盥[タライ]を佑一に投げつけ、一気に出ていく真琴。 盥は顔面直撃。 風呂に沈む佑一。 風呂から出ると、タオルを巻いて震えている真琴が立っていた。 「ま、一緒に住んで居るんだから、んな事があったって良いじゃないか」という佑一に、 「そんなことがあってたまるかっ へーちょ」と文句とくしゃみが一緒に出てきた。 それを聞いた佑一は、「なんだ?マコピー語か?」 「あぅー 見たいテレビがあったら、今夜中に見て起きなさいよっ!!」とご立腹。
夜、ベッドの中で、舞の言っていた"魔物"の事について考えていると、ドアの向こうに、「へーちょ」とくしゃみをしながら、忍び寄ってくる真琴の気配を感じた。 案の定、真琴は仕返しをするために、侵入を試みたが、 隠れていた佑一に背後から襲われて、御用。 そのまま、自分の部屋へ強制連行。 
翌朝。 「おはよう、佑一くん!」と元気な声が聞こえる。 「名雪のヤツ、まだ起きてこないんですか?」と佑一が聞く。 名雪は、部活で疲れたらしくまだ寝ているらしい。  「秋子さん!ご飯おかわり。」「はいはい。」「真琴は?」「風邪気味だって」。。。 「ってゆーか、誰だお前! なんでここにいる! 飯は自分の家で食え!」とやっと、そこにあゆが居ることに気づいた佑一。  何でも、ゴミを出したときに、偶然通りかかったあゆを秋子さんが朝食に招待したらしい。
学校の放課後、また、舞に出会った。 声をかける佑一。 「いた。 川澄舞さん。 夕べ、あったよな? 何してたんだ? 魔物って何? ・・・返事くらいしてくれよ。はい でも いいえ でも良いから」と言う佑一に、「はい」と答える舞。  そこへ佐祐理がやって来た。 「あれ? 舞とお話してたんですか?」と聞く佐祐理。 「愛の告白を受けていた。」 「ほぇ〜」と信じてしまいそうな佐祐理に慌てる佑一。 そして、「告白、してない・・・」と一言、舞が言う。  「良かったら、一緒にお昼ご飯、いかがですか?」と佑一を昼食に誘う佐祐理。
屋上への踊り場。 シートを敷いて、お弁当の重箱を広げる佐祐理。 「ん! ごっつ美味い。 これ、佐祐理さんが作ったのですか? 合格。」 「何に合格なのですか?」と聞く佐祐理。 「俺の嫁に」と答える佑一。  その答えに笑って、「こんなことで、佑一さんのお嫁さんになれるんなら、世の中の女性のほとんどが佑一さんのお嫁さんですよ。 でも、佐祐理、頭悪いから、佑一さんには釣り合いませんよ。」と謙遜する佐祐理。  その隣で、モグモグ食べている舞。(俺の嫁) そして、箸が止まって、こっちを見ている。 それに気づいた佑一は、「何か、食べたいのか?」と聞いてみる。  すると、「卵焼き・・・」と答えた。 小皿に取って渡す。 そして、佑一は、”この人をしゃべらせると、何か勝ったような気がするんだよな・・・”と思い、重箱を自分の周りに寄せる。 しばらくすると、再び舞が何かを食べたそうにしている。  「食べたいものがあったら、取ってやるよ」と言うと、「・・・タコさんウィンナー」と答えた。 「よっしゃ!」と思わずガッツポーズの佑一。 「タコさんウィンナーを言わせたのは大きいぞ。 タコさんウィンナーが好きなのか?」と聞く佑一。  「きらいじゃない。」と舞。 「タコが好きなのか? それとも、ウィンナーか?」「ウィンナー・・・」 「タコはどうだ? 嫌いか?」「さぁ・・・」 そんなやりとりを見て、佐祐理が笑う。 「佑一さんって、面白い方ですね。」 そして、また、一緒にお昼を食べることになった。
そして、帰ろうと学校の外に出ると、また栞と出会った。 「また会ったな。」と佑一。 一緒に歩きながら、話をする二人。 栞の風邪を気遣う佑一に、本当のおにいちゃんみたい と栞が言う。  栞は、佑一に会えるかと思って学校に来たらしい。「佑一さんって、面白い人ですね・・・」 さっきもどっかで聞いたようなセリフ。 「佑一さんって、雪、好きですか?」と聞く栞。 「冷たいから嫌いだ」と答える佑一。  そんな佑一に一緒に雪だるまをつくろうと誘う栞。 栞の幼稚園のころの夢は、大きな雪だるまを作ること、全長10mくらいの。 
帰り道、今度は、真琴が走ってきた。 買い物を頼まれて、豆腐を買いに行く途中らしい。 「一人で買えるのか?」と言う佑一に「大人だから買える!」と頑張る真琴。 そんな真琴に佑一は、 「じゃ、ついでにエロ本も頼む」と言って、財布をとりだした。 「エロ本って、何の本?」とエロ本を知らない真琴に、「大人向きの本で、読むと興奮するんだ。 本屋の店員に エロ本下さい って言える? たくさんあったら、オススメでいいからな」と説明する佑一。  「真琴も読んで良いよね!」と小銭を握りしめて言う真琴。 「いいぞ。お前も大人だったらな」 そして、真琴は、旅立っていった・・・w
「佑一! 真琴になんて本を買わせようとするの!!」と真っ赤になって部屋に乗り込んできた。 「買えない!買わない!買えるかぁ!」とハイテンションなエロ本三原則を宣う真琴に、「それは、お前が子供な証拠だ。 大人の女性なら、平気で買えるぞ」と佑一。  「嘘だ!!!」と暴れる真琴。 しかし、真琴は、佑一が食べていたものが気になってきた。 「何それ?」 「知らないのか? 肉まんだ。 におい嗅いでみるか?」 その芳しい香りに はぅ〜 な真琴。  次の興味は、マンガへ。 そして、肉まんの帰る場所を聞き出し、慌てて家を飛び出した。 しばらくして、真琴の部屋へ行ってみると、大量のマンガを読みながら、肉まんを頬張る真琴がいた。  「お前。こんなに、金、持ってたのか?」と聞く佑一に、「ぅん」とテキトーに答える真琴。 佑一が肉まんを一個失敬しても、全く気づかない真琴。 その後、だいぶ経ってから、肉まんがへっていることに気づいて、 真琴がまたやって来た。 「お前なぁ、食って寝て・・・ それじゃ、動物だぞ」と呆れる佑一。 そして、豆腐をまだ買ってきてなかったことがバレる。 そうにも、豆腐のお金で、色々買い込んできたらしい。 「こらー!」と佑一。  そんな佑一をなだめる秋子さん。 
夜。 再び佑一は、学校に向かう。 やっぱり、舞は学校にいた。 「腹、空いていないか?」とコンビニのおにぎりを出して聞く佑一。 「剥いて・・・」と舞。 おにぎりを差し出す佑一。 その時、背後に、白い塊が近づいてきた。  すかさず、舞の剣が斬る。 中には、佑一の後を付いてきた真琴が入っていた。 「はぅ〜。 死ぬかと思ったぁ」と真琴。  そして、真琴の頭を撫でる舞。 「佑一。コイツ、危ないわ!」と舞を指さして暴れる真琴。  「お前が言うなよ」と呆れる佑一に、「佑一。あの子に優しくして・・・」と舞が言う。 次回 
<謎だらけの嬉遊曲〜divertimento〜> 



Kanon #06/2006-11-10
<謎だらけの嬉遊曲〜divertimento〜>
夢。 夢の始まった日。 木漏れ日の光が眩しかった。 雪の感触が冷たかった。 そして小さな子供が泣いていた。 その泣き顔は、今も思い出せない・・・

「あゆあゆー!」 幼い佑一が待ち合わせの場所に向かって走ってくる。 ひとりベンチに座っているあゆ。 「ごめん。遅刻した。 いろいろと忙しくて・・・」と息を切らせながら佑一が駆け寄る。  「あゆあゆじゃないもん・・・」とあゆ。 「じゃ、なんて名前なんだ?」 「月宮あゆ・・・」 そして、ふたりは、たいやき屋さんに向かった。 ふたりで、たいやきを食べる。  「あのね・・・ ありがとう」とあゆが言う。 夕陽の中、歩くふたり。「ねぇ。佑一くん。 お母さんのこと、好き?」とあゆが聞いてきた。  「好きだよ。」と答える佑一。 しばらく間をおいてあゆが続ける「あのね。 お母さん、居なくなっちゃったんだ。 ぼくひとり残して。 それだけ・・・」そう言うとあゆが立ち止まった。  振り返ると、あゆがとても寂しそうな顔をしていた。 「明日も、一緒に遊ぼうな!」と佑一が言う。 「ホントに!? ぼく、佑一くんといると、楽しかった日のこと思い出せるから・・・」 そして、今日は佑一のほうから、指切りの小指を差し出した。
そんな事を思い出していた佑一。 そこへ、再び、仕返しをしようと真琴が忍び寄ってきた。 「あは。 あはは。」笑いをこらえようとしても、漏れてしまう真琴。  そっと、ドアを開け、ネズミ花火に火を付け、部屋に放り投げた。 「あのバカ!」飛び起きた佑一は、花火をつかむと、ドアの外に放り投げ、ドアを閉めて、耳を塞いだ。  ドアの外では、花火の炸裂と真琴の悲鳴が響く。 その音に、秋子さんと名雪も起きてきた。 「花火がやりたいのなら、そう言いなさい。 今度、いっしょに花火をやりましょうね」と優しく言う秋子さん。 
朝。 佑一がリビングに行く。 「名雪は?」 「まだ、寝てるはずですよ。」 そう言いながら、佑一の湯飲みにお茶を入れる。 「秋子さん! ぼくにも!!」と湯飲みを差し出す手。  「いただきます」と佑一が箸を手に取る。 そして、「ごちそうさまでした」と佑一。 部屋に戻ろうとすると、あゆが佑一の裾をつかんで、「佑一くんのいぢわるぅ」と言う。  「あ。あゆ。 いつから居たんだ?」と言う佑一に、「最初からずっと居たもん!!」とご立腹。 そして、あゆが一緒に遊ぼうと誘ってきた。 それを聞いた佑一は、「食い逃げか!」と怯む。  しかし、あゆは、秋子さんからもらったチケットを取りだし、一緒に行こうと言う。 約束は、5時に駅前。 嬉しそうにあゆは、秋子さんにお礼を言って、出ていった。  あゆと入れ替わるように、半寝起きの名雪がフラフラ降りてきた。 「お前は寝てろ」と佑一。 「今起きてきたばかりなのにぃ」と名雪。 名雪は、玄関で誰かが転んだような音と、「うぐ。居たいよぉ」という声で起きてきたらしい。  「アイツのドジは昔からです」と言う佑一に、「あゆちゃんのこと、むかしから知っているのですか?」と秋子さんが聞く。  「友達なんです。 この街に遊びに来たときの。」と答える佑一。 「もしかすると、佑一さんのことずっと待っていたのかもしれませんね・・・」と秋子さんが呟く。  名雪は、寝ながら起きながら「なっとぅ なっとぅ」と納豆をぐるぐるかき回していた。 
佑一が自分の部屋に戻ろうと階段を上っていると、真琴が降りてきた。 「お前、昨日あれだけのことをやって、よく平気な顔してられるな」と佑一。 そして、佑一は真琴を部屋に連れて行くと、 バイト探しの専門誌を真琴の前に並べた。  佑一がバイトを探すために買って置いた物だったが、「お前の常識の無さの原因は社会経験が不足しているからだ。」 「えー。 真琴、仕事するの?」と乗り気ではない真琴。  「どんな仕事がしたい?」 「えっとぉ・・・ ずっとマンガを読んでて良い仕事。」 「いきなりそんな甘いこと言うな」 しかし、マンガ喫茶のウェイトレスの募集を見つけた。  早速電話させられる真琴。 なんとか、面接を受けることになった。 夕方、真琴をマンガ喫茶の近くまで送り、そのついでに、学校に寄って部活をしている名雪の様子を見に行く。  しかし、名雪の姿は体育館には見えなかった。 仕方なく、帰ろうとするが、ふと、 「まさか・・・アイツは来てないよな」と栞のことが頭をよぎる。 前に栞のいた場所に行ってみると、案の定、いた。  「何しに来たんですか?」と栞が声をかける。 「風邪を引いているのに、ここ来ているヤツを捕まえようと、落とし穴を作るために来たんだ」と答える佑一。  「そんなことする人、嫌いです。」と栞が言う。 今日もずっとそこにいたという栞に呆れる佑一。 「ホント、変ですよね。 誰もいないってわかっているのに、ここへ来てしまう。 でも、結局誰もいない。 それでも、ここを動くことが出来なかった。 もしかしたらって・・・そんな曖昧な希望で、そしたら、こんな時間に・・・ バカですよね」という栞。  そんな栞の肩をそっと抱く佑一。 そして、佑一は、ひとつだけ正直に答えて欲しいと栞に言う。 「体重とスリーサイズ以外でしたら良いですよ」と栞。 「どうして、こんな場所に毎日来るんだ? 何か訳があるのか?」  「ホントにわからないんです。 わからない答えを探しに来ている・・・ そんな答えでも良いですか?」 その時、5時を知らせる鐘の音が聞こえた。  あゆとの約束を思い出した佑一は、駅前に急ぐ。
「あゆ!」佑一の声に、立ち上がるあゆ。 「悪い。遅刻した。 いろいろと忙しくてな。」 とても嬉しそうなあゆの顔。 「待ってる人が来てくれるのが一番うれしいもん。 待ってて良かったって思える!」とあゆ。 「・・・待つ、か・・・」
そして、映画館の前に辿り着く。 「これ、めちゃくちゃ怖いって有名なヤツだな。 失神したヤツが居るとか。 上映禁止になったところがあるとか・・・」 佑一の隣で、既に青ざめているあゆ。 「どした? 早く入ろうぜ」
あゆは、コートにくるまって目を閉じている。 上映中、ずっと うぐぅ を連発するあゆ。 「うぐぅ にも色んなバリエーションがあるんだな・・・」と冷静な佑一。
映画が終わって、喫茶店に入る二人。 やっと落ち着けるあゆ。 そして、夜になって、帰ることに。 「今日は、楽しかったよ。 ありがとな。あゆ。」と佑一。 「ぼくも楽しかったよ」と元気になったあゆ。  「バイバーイ」と手を振るあゆだったが、佑一の後を付いてくる。 それに気づいて振り向く佑一。 「どーして付いてくるんだ?」 「・・・だって、帰り道、怖いもん」 「なぁ・・・」とため息を付く佑一。  結局、しばらく一緒に歩く。 「この辺でいいだろ? 良い か OK かどっちかで答えろ。」 「どっちも一緒・・・」 「家まで送っていくか?」と聞く佑一に、一人で帰ることを決意するあゆ。  「うん! バイバイ佑一くん!」 勇気を振り絞って、駆けていくあゆ。 「アイツの家って、どこなんだ?」
家に戻ってみると、面接中に居眠りをしてしまって失敗した真琴が悄気ていた。 そして、結局、秋子さんの知り合いの保育所で働くことにあった。 「出来るかなぁ・・・真琴に・・・」とちょっと不安気な真琴。  そんな真琴を優しく励ます秋子さん。 
「そろそろ時間か・・・」 佑一は、また夜の学校に、差し入れを持って向かった。 「何やってるんだろうな・・・俺。」 その時、机が倒れる音が校舎に響く。 教室へ行ってみると、舞が剣を構えていた。  「また魔物か?」 「うん」 「佑一。 しばらく、ここには来なくて良い。 あの子の側にいてあげて・・・」と佑一に言う舞。 「あの子って真琴のことか? アイツの事を知っているのか?」と佑一。  「何も知らない。 ただ、もうすぐあの子、佑一が必要になる。 そんな気がする・・・」
家に戻ると、名雪が「また出かけてたの?」と声をかけてきた。 「あぁ。 魔物退治だ。」 「魔物? わからないよ。」 そんな名雪に、 「わからない答えを探しに行っている。 そんな答えでも良いか?」と栞の言葉を引用する佑一。 余計に混乱する名雪。  「まったく、世の中、わからないことばっかりだ・・・」 
佑一が風呂に入ろうとすると、真琴が出てきた。 そして、風呂場の扉をあけて、びっくり。 湯船が、みそ汁になっていた。 絶叫する佑一。 犯人は、やっぱり真琴。  「食べ物を粗末にしてはいけません」と秋子さんにも言われ、落ち込む真琴。 そんな真琴を見て、舞が言っていた言葉を思い出す佑一。 ”あの子には佑一が必要になる・・・”     次回 
<家出と仔猫の遁送曲〜Fuga〜> 



Kanon #07/2006-11-17
<家出と仔猫の遁送曲〜Fuga〜>


「あはは」 真琴がまた忍び足で佑一の枕元に近づく。 「何の用だ?」と気配を察した佑一は寝床を抜け出していた。 電気をつけると、鋏を持って真琴が悪巧みをしようとしていた。  「えっとぉ・・・ 紙飛行機でもつくろうと思って・・・」 「紙飛行機に鋏なんか使うか? 大方、俺の髪の毛でも切るつもりだったんだろ!」 図星の真琴。 あははー と誤魔化しながら、 佑一の机にあったノートを切り、紙飛行機を折って飛ばす。 それを拾い上げると、明日提出の宿題。 絶叫する佑一。 逃げる真琴。
「いっちごジャムぅ〜♪ いっちごジャムぅ〜♪ 」ご機嫌で、トーストに苺ジャムを塗りたぐる名雪。 「お母さんの苺ジャムがああれば、ごはん3杯は食べられるよ!」と笑顔の名雪。  そして、今日から幼稚園での仕事が始まる真琴も起きてきた。 「そうだ! 今日からお仕事の記念に、あれを食べて貰おうかしら」と秋子さんが取り出したものは、"謎ジャム"。  引きつる名雪と佑一。 真琴の目の前で、秋子さん自らトーストに塗ります。 「あんなにいっぱい・・・」「俺たちにできることは見守ることだけだ」と名雪と佑一。  「いただまーす!」真琴がかぶりついた瞬間、目をそらす佑一。 「どう気に入った?」と秋子さん。 「あうー・・・・」真琴な周囲が歪み始めた。 涙目になってきた。  「遠慮しないで、いっぱい食べてね。 まだまだ、いっぱいあるから」 「あぅ〜・・・」
名雪と佑一は、学校に向かう。 その途中にネコを見つける。 「あー! 可愛いネコぉ」 「なんだ、あのかわいげのないネコは・・・」と相反する第一声。 「ねーこねこ。 ねーこぉ」と手を伸ばす名雪。  しかし、以前、名雪は、ネコアレルギーでくしゃみが止まらなくなったことを、佑一は覚えていた。 何とかして、やめさせようとするが、それを振り切って、ネコに必死にじゃれつく名雪。 「どっちが動物か、わかんないな・・・」と呆れる佑一。 
学校に着くと、案の定、アレルギーが出てしまった名雪。 涙が止まらない。そんな名雪を心配して、北川と香里が心配する。 「どうした? 相沢にでもいじめられたのか?」 「いじわるならいつもされてるけど・・・」 「[;´Д`]<ははぁん。ネコアレルギーね。 またネコにじゃれついたんでしょ・・・」 「・・・うん」
そのころ佑一は、校舎の外で、栞と会っていた。 「佑一さん。 約束覚えています? 雪だるまつくること・・・」 
その後、佑一は、舞と佐祐理と一緒に昼食。 「舞。 あれからどうなった? 例の物は、出たのか?」と佑一が聞く。 答えない舞。 「yesかnoか」 「。。。ノー」と答える舞。  「そうか。出ない日もあるのか・・・」 そんなやりとりを聞いていた佐祐理は、「なんのお話です?」と佑一に聞くと、「舞のお通じの話だ」と答えた佑一。 「ほぇ〜・・・ 舞、お薬あげようか?」と本気にしてしまった佐祐理。  そして、舞も否定しない。 焦る唯一。 そして、だいぶ間をおいてから、「・・・ちがう」と一言。 「あははー。冗談だったんですねぇ」
放課後、佑一が、街を歩いていると、後ろからあゆが飛びかかってきた。 「今日はなにをやっているんだ?」 「ぼくがここに来る目的は、ひとつだよ。」 「食い逃げか?」 「うぐぅ・・・」 「探し物か? 何を忘れたのかは、思い出せたか?」  しかし、佑一は、今日は、早く家に帰る用事があったため、一緒には探せないと言い、あゆと別れる。 その時、ゲームセンターのプリクラを見つめている真琴を見つけた。  近づいて、「お前も撮りたいのか?」と声をかける。 「別に! あんなの撮りたくないもん! あんなので喜ぶなんて子供だもん!! もう。帰る!!」と怒って歩き出す真琴。 
「で。 保育所の手伝いはどうだったんだ?」 「簡単だよ!ちゃんとできたもん」と真琴。 「そして、あんたなんかとは、帰りたくないもん!」と言って、先に行ってしまった。 佑一は、昨日、真琴に破られたノートを買いに行くことを思い出した。  しかし、佑一の後ろをちょっと離れて真琴が付いてくることに気づいてしまった。 「なにこっそり着けてるんだよ?」 「真琴も、こっちに用事があったの!」 「隣を歩けよ。 一緒の家に住んで居るんだから」と佑一が言うと、素直に、一緒に歩く。  すると、今朝のネコが、真琴にすり寄ってきた。 「何このネコ。 真琴、ネコなんて触ったことないもん」と真琴。 「ほら、頭でも撫でてやれよ。 暖かいぞ」とネコを抱き上げる佑一。  「やだ・・・」 「帰りに肉まん買ってやるから。」 「じゃ。ちょっとだけ・・・」と渋々手を伸ばす真琴。 「あったかーい」と真琴。 そして、ネコは、真琴の首筋から頭によじ登って、気持ちよさそうにしている。 
肉まんも食べ、歩道橋の上で話をするふたり。
「そのネコ、どうする。 連れて帰りたいけど、名雪もいるし・・・」
「そんなのどうでも良いじゃない。 肉まんも食べたし、用無しよ。」
「お前、凄いこと言うな。」
「そんなに懐いているのに、可愛いとか思わないのか・・・」 
「動物なんて、いらなくなったらポイでしょ? なまじ、人と暮らして平和な思いをするよりも、このまま野に返してやるべきよ。」
「野に返すって・・・」
その次の瞬間、ネコが歩道橋の下の道路に向かって、真琴の手から抜け落ちた。 あっと思う佑一。 トラックの荷台に落ちた。  その晩、夕食の時間になっても、真琴は戻ってこなかった。 心配する名雪だったが、佑一は怒りがおさまらないようだった。  しかし夕食の後、佑一も心配になって、探しに出ることにした。 「アイツの行きそうな場所なんて。。。 そういえば、アイツのこと、よく知らないな」と呟く佑一。 結局、学校に来てしまった。  そして、案の定そこにいるであろう舞に声をかけた。 「聞きたいことがあるんだけど、いいか?」 「何?」 舞に真琴の居場所に検討はないか聞いてみると、<ものみの丘>という場所をあげた。  佑一は、その場所に向かった。 すると、真琴はそこにいた。 その隣には、あのネコもいた。 二人で、肉まんを分けて食べていた。 「あったかーい・・・」真琴は、ネコを抱いて寂しそうにしている。  「あたしたち。 一緒だね。 邪魔者で、どこにも行けない・・・ 寝よっか。 夕方から、ずっとキミのこと探して、疲れちゃった。。。」そう言うと、横になる真琴。 「・・・ほんと。 疲れた・・・」眠ってしまった真琴。  「そっか。お前のことを捜していたのか。 おい、真琴。帰るぞ。 お前は、俺たちの家族なんだから。」と佑一。
夜中に起きた真琴。 起きてみたら家にいて、驚き絶叫する。 それに気づいて、みんな起きてきた。 「どうして、真琴はおウチにいるの?」 「それは、ここがお前の居場所だからだよ。 記憶をなくしている間は、ここがお前の家だ。」  あのネコも、真琴の部屋で寝ていた。 「おなか空いたでしょ? 今、なにかつくってあげるわね」と秋子さん。
「あのさ・・・ さっき、丘の上で、私が眠りかけていたときに、誰かが声をかけてくれたような気がしたんだけど・・・」と真琴。 「それは、俺だ。 "安らかに、眠れ〜"だったかな」と冗談をいう佑一。 次回 
<追憶の幻想曲〜fantasia〜> 



Kanon #08/2006-11-24
<追憶の幻想曲〜fantasia〜>


真琴は、ネコをどうするかで悩んでいるようだった。 秋子さんに聞いてみろ、と佑一は言う。 すると、1秒で「了承」と秋子さんが答えた。  となるとい次は名前。 佑一が、女の子ウケする名前を考える。 第1案「猫塚ネコ夫」 却下される。 第2案「シャム塚シャム夫」 却下。  第3案「にくまん」 却下。食べ物の名前なんかイヤだという。 第4案「ピロシキ」 ピロちゃ〜んなんて呼ぶとかわいい。 それは、乙女コスモから生まれ出た言葉。 真琴も気に入った様子。 ピロシキって、ロシヤの・・・

保育所に向かう真琴の頭の上に、ピロが乗っかている。 「肉まんって、どうしてあんなに美味しいんだろうね?」と真琴なりの日常会話を佑一に振る。 返答に困った佑一は、最高の笑顔で「美味しいよね☆」と返す。  返すがあまりの自分の気持ち悪さに、il||li _| ̄|○ il||liな佑一。 
学校で、舞に真琴が見つかった事を伝えた。 「どうして真琴の事が分かったんだ?」と聞く佑一。 「そんな気がしただけ・・・ わたしには、何もできない」と答える。 そんな時、目の前を、一人の女の子が通り過ぎる。  「ひょっとしたら、あの子ならできるかもしれない・・・」 授業のベルが鳴ってしまった。 その後の昼食も、普段と変わらない。 そして、放課後。 校門の所で、真琴がじっと学校の方を覗いている。  「アイツは、なにをやって居るんだ?」と佑一が独り言を言うと、さっきの女の子が声をかける。 「あなたを待っているんです。 あの子は、あなたのお知り合いですね・・・ 良い子そうですね。 名前は、何て言うんですか?」 「真琴だよ。沢渡真琴。」と答える佑一の脳裏に、 昔見た光景が広がった。 <夏に日、自分は縁側で寝ころび、誰かと話をしてた。 「その人の名前は、真琴。 沢渡真琴っていうんだ」>と幼い佑一が誰かに向かって話をしてる光景。 「・・・沢渡真琴・・・あっ」と息をのむ佑一。 しかし、女の子は居なくなっていた。
帰り道、あまり元気のない真琴。 保育所にピロを連れていったら怒られたらしい。 明日からは連れていけない。 そんな真琴に「ほら。 肉まん買ってやるから、元気出せ」と言う佑一。  「本当!」と喜ぶ。 
夜、真琴は佑一の部屋に走り込んでくる。 真琴は、佑一に<良いもの>を見せたいらしい。 「お前の裸なら、もう見た」という佑一。 「あーあ。あんなにかわいい物が見れないなんて、佑一は、かわいそー」と真琴。  真琴に付いていくと、ミルクを舐めているピノだった。 呆れて、自分の部屋にもどる佑一。 しかし、すぐに、真琴がやってきた。 今度は、かなり焦っている。  ピノがお腹を壊して苦しんでいるらしい。 「冷たいミルクなんて、飲ませるからだ。」という言葉に反省する真琴。
真琴と一緒に寝るピロ。 その寝顔を見て、佑一は、沢渡真琴が、この子じゃない事を思い出していた。 沢渡真琴、それは、もっと年上の女性だったような気がした。 しかし、その名前を知っている奴は誰もいないはず。 ただし、あの時部屋にいた、アイツ以外には。。。 「バカか・・・ 何考えているんだ、俺は」とつぶやき、自分の部屋に戻る。 
翌朝、また真琴と一緒に歩く。 「あれ? 足がフラフラする。 夕べ、あんまり寝ていないからかな・・・」と真琴。 
学校に着いた、佑一は、昨日会った女の子を呼びだした。 
「話って何ですか?」
その女の子は、1年生。 名前は、天野美汐。 佑一は、美汐に真琴の友達になってほしいと言う。 しかし、「友達? 記憶がないんですね」という返答だった。  「なぜ、私に、あの子の友達になれと・・・」と言う美汐に説明する言葉が思いつかない佑一。 「あの子の友達になれとなんて、そんな酷なことはないでしょう・・・ あの子とは、友達になりません。 絶対に。」と美汐が言う。  佑一は、舞も美汐も妙に真琴を避けている理由が分からない。 「あの子の事を知っているんじゃないのか?」と聞く佑一。 しかし、美汐は知らないと答える。 そして、「会ったことがあるとすれば、あなた自身です。相沢さん。」と続けた。  「アイツと・・・」と驚く佑一。 「出会っているはずです。 遠い昔に・・・ でも、そのときあの子は、」と言いかけたところで、佑一が話を切った。 「それ以上、言わないでくれ・・・」

放課後。 真琴は、また、校門の所で、佑一を待っていた。 帰り道、真琴は、自分の昔のことを思い出す手がかりを見つけたと言う。 そして、その場所に行ってみる。 「ここか・・・」そこは、草が生い茂り、街を見下ろせる丘の上。  「うん。 ずっとここにいた気がする。。。」と真琴。 林の中に進む。 その奥で、真琴と佑一は、確かに見覚えのある場所に辿り着いた。 「ここは、俺が、アイツと別れた・・・」 その時、突然、真琴が、佑一を叩いてきた。  「なんか凄くムカツク事があったような気がするの」 「ここで、この場所でか?」と佑一が聞く。  そして、雪が降ってきた。 もう、丘を降りようと、佑一が真琴に言う。 真琴は、なにか躊躇しているようだった。 「また肉まん買ってやるから」と言う佑一の言葉に、一気に笑顔になる真琴。  先に走り出そうとするが、足がもつれて転んでしまった。 
丘を降りて、街の肉まん屋さんで、肉まんを買う。 肉まんを頬張りながら、”日常会話”をする。 <真琴と佑一が一緒に揃うと、バカになる・・・> また、雪が降ってきた。 はしゃぐ、真琴。 
家に戻ると、おでん。 秋子さんは、真琴のことを、警察や市役所に出向いて、いろいろと探してくれているらしいが、一件も捜索願が出ていないらしい。 「あの子にも、家族は居るはずなのに・・・」
ごはんまで、部屋でのんびりしている佑一の所に、紙飛行機を作ろうと真琴が入ってきた。 次は、マンガを持ってきた。 一緒に読みたいと言う。 佑一は、仕方なく、一緒に読むことに。  二人でベッドに寝そべりながら佑一が真琴に読んでやる。 ”恋はいつだって、唐突だ・・・”という冒頭。 「ベタベタの少女マンガだなw」と佑一。 ”恋はいつだって、唐突だ・・・ (中略) わかった。いつか絶対に迎えに来るから・・・ その時は二人で一緒になろう。 結婚しよう。 それまで、さようなら。    おわり”  感動に打ちひしがれる真琴。 「結婚は人生の墓場って言うんだぞ」と佑一。
ごはん。 なぜか箸が握れない真琴。 何度も落としてしまう。 「あれ? 疲れているのかな・・・」 そんな真琴に気を利かせて、スプーンを持ってきてくれる秋子さん。 
深夜。真琴は佑一を起こしに来た。 「ねぇ佑一。 ピロ知らない?」 勝手に布団をめくりあげる真琴。 「やっぱり居た!」 ピロは佑一のベッドで寝ていた。 「ほら。ピロ。もどろ。」でも起きないピロ。  そして、真琴は、「真琴もピロと一緒寝るぅ」と言って佑一の布団に潜り込んできた。 佑一は、替わりに真琴の部屋で寝ようとベッドから降りようとするが、真琴が、佑一の袖を握りしめていた。  しばらく、仕方なく天井を見つめていた佑一。 「・・・ずっと・・・ ずっと一緒にいられると思ってた」と真琴が寝言を言い出した。 「だた一緒に居たかった。 ずっと、一緒にいたかったのに・・・」 真琴の瞼には、涙がにじみ出ていた。  ”ずっと夢の中にいた気がした。。。 10年前。 俺と寝ていたアイツ・・・ 丘でケガをしていたアイツを、俺は手当てしてやった。 それから、誰にも内緒でずっとここで暮らしていた。。。”
翌日、美汐と佑一。 「真琴は、人じゃないんだな?」 「そうです。 信じられないのは分かります。 私も同じ気持ちでしたから。。。 あの子は、ただ、相沢さんに会いに来ただけでしょう。 ただ会いたかっただけ。 それだけのために、人の姿となり、丘を降りてきただけなんです。 今、相沢さんは束の間の奇跡の中にいるんです。 そして、その奇跡とは、一瞬のきらめき。 あの子が、自分の命と引き替えに手に入れた一瞬のきらめき。」  奇跡を起こすには、二つの犠牲が必要。 ”記憶”と”命”。 「あの子は、何も知りません。 でも、少しずつ、体力が衰え、人のように振る舞うことが難しくなる。 医者にもどうすることもできない。」  「アイツは、それを知らないのか?」と佑一が聞く。 「訪れる別れは、相沢さんが情を移しているほどに悲しいものです。 それを覚悟しておいてください。」と言う美汐。 そして、最後に、「これ以上、私を巻き込まないでください」と強い口調で言い、走り去る。    次回 
<子狐の子守歌〜bereeuse〜> 



Kanon #09/2006-12-01
<子狐の子守歌〜bereeuse〜>


「あれ?お箸、落としちゃった・・・」 お箸が全然握れない真琴。 そんな真琴の姿を見て、佑一は美汐の言っていた言葉を思い出していた。  <少しずつ体力が衰え、人のように振る舞うことが難しくなっていく・・・>
今日も、真琴と佑一は一緒に家を出る。 「今日も寒いねぇ〜。」を連呼する真琴。 「あったかいのが好き。 春が来て、ずっと春だったらいいのに・・・」と冬空を仰ぐ真琴。  「そっか。真琴は春が好きか・・・」と佑一。 真琴は振り返って、「うん! ずっと春だったら、真琴もずっと元気で居られる!」 「もうすぐ、あったかくなるさ・・・」 「だよね!」と真琴が微笑む。

<10年前、ものみの丘でケガをした一匹の子狐を拾った。 名雪の家にいた俺は子狐のケガを手当してやり、走れるようになるまで、こっそり部屋に置いてやった。 そいつを話し相手に、色んな事をしゃべってやった。 一緒に寝たりもした。  でも、いつまでも一緒には暮らせなかった。 俺は、自分の街に帰らなければならなかったからだ。> たった半月の事だった。 何があの時に始まっていたというのだろう・・・
学校が終わり、今日も校門の所には真琴が迎えに来ていた。 真琴は、肉まん狙いでやってきたんだ、と言う。 帰り道、佑一は真琴に何でも買ってやるぞと言ってしまった。 それに喜ぶ真琴が指さしたものは、100円ショップの小さな鈴。  「そんなもので良いのか? もっといいヤツを買ってやるぞ?」と佑一が言うが、真琴は嬉しそうに、自分の手首に着けて、音を鳴らして喜んでいる。 
真琴が歩くと小さな鈴の音がなる。 真琴は、ふと、プリクラの前で立ち止まった。 「一度、みんなで写真を撮るのも良いかもしれないな・・・」と佑一が言う。 
家に帰ると、今日のごはんは、カレー。 真琴にも食べやすいように、スプーンで食べられるもの。 初めて食べるカレーをスプーンで掬って、美味しそうにたべる真琴を優しく見守る秋子さん。 ごはんが終わって、歯磨きをしようとしても、上手く出来ない。  「歯ブラシをかせ。 俺が磨いてやる」と佑一が真琴の手から、歯ブラシを取る。 「いいよぉ。もう子供じゃないんだから・・・」と顔を赤らめる真琴。 「いいから、口を開けろ。」 ちょっとモジモジして「あぅー。 あー」と口を開ける真琴に丁寧に歯ブラシをしてあげる佑一。
夜、真琴がピロを連れてやって来た。 「佑一。 ピロがまた一緒に寝たいって。 いいよね? ちゃんと聞いたからね・・・ 入るよ」と真琴がドアを開けて小声で言う。 ベッドに近づくと、佑一は起きていた。 「好きにしろ」と言って、佑一は少し身体をずらして場所を空ける。  佑一の脳裏には、美汐の言葉が離れなかった。 今、自分は束の間の夢の中にいる・・・ 眠れない佑一は、一人起きだして、コートを羽織り、外に出かける。 行き先は、ものみの丘。 
「ここに来たからって、何かが分かるはずじゃないんだけどな・・・」と街を見下ろす佑一。 その時、風に揺られて鈴の音が聞こえた。 振り返ると、真琴が立っていた。 
「ついて来てたのか?」
「だって、何も言わずに出て行っちゃうんだもん・・・ また置いていかれるんじゃないかと思って・・・ ずっと昔に同じ事があった気がする。 ひとりきりで、置き去りにされて・・・佑一を捜し回って・・・見つからなくて・・・ここ、この場所で・・・真琴は昔・・・」と何かを思いだしてしまいそうな真琴を「思い出すな!!」と止める佑一。  そして、優しく抱きしめ、「何も思い出さなくていい。 お前は、沢渡真琴という人間の女の子だ。」と言う。 「うん。そだね・・・」と目を閉じる真琴。 「寒かっただろ。 帰ろ・・・」
家に戻り、また佑一のベッドでピロを挟んで横になる佑一と真琴。 真琴は佑一の背中を見ながら、「ねぇ。 なんだか怖い。 一人で寝ていると、なんかものすごく暗いところにいて、真っ暗で何も見えなくて、ひとりぼっちなの・・・」と言う。「もう一人で出ていくことはないから安心しろ」と佑一が優しく言う。

その次の日の放課後、真琴は校門の所にはいなかった。 家に帰っても、まだ戻っていないという。 佑一は慌てて、探しに出る。 夜になっても、見つからない。 「これで、さよならじゃないだろ?」 
探す当てもなくなり、家に戻る佑一。 心配する秋子さんと名雪。 「全部、俺が悪いんだ・・・」と自分を責める佑一。 その時、玄関が開く音が聞こえた。 玄関に急ぐと、疲れ果てた真琴がフラフラになって帰ってきた。  「心配したんだぞ?」 その場に倒れる真琴を支える佑一。 真琴は、高熱を出していた。 「ピロが・・・居なくなったの。 ずっと探してたんだけど、見つからなかった・・・」
「ゆういち・・・ あったかい・・・」佑一の手を握って、力無く声を出す。 
翌朝、学校に行こうとすると、真琴が佑一の袖をつかむ。 「どうした? 具合が悪いのなら、まだ寝てろ。」という佑一。 「やだぁ」 「何がイヤなんだ?」 「こんどは、ゆういちがいなくなるの・・・」 真琴の思い詰めた様子に学校へは行かず、真琴の相手をする事に。。。 
佑一は、真琴の為に、みかんを剥いてあげる。 「う〜ん、すっぱぁーい。」と真琴。 「もっと食べるか?」と聞く佑一に頷く。 しかし、口の中に、みかんの皮が残っている。 飲み込めないで、モグモグしている真琴にそっと手を差し出す佑一、「ほら。」 
その夜、美汐から名雪の家に電話が入った。 駅前で美汐と佑一が話をしている。 
「どうしても会いたくて・・・ あの子は、どうしています?」
「今、寝ているよ。」
「高熱を出しましたか?」
「あぁ。 それからずっと、子供みたいになっている。」
「力が失われるとき、発熱するそうです。 本来ならば、それで終わっていたようです。 でも、不完全な形で今も人の形であり続けているのです・・・ あなたへの想いがそれだけ強うと言うことでしょう。」
佑一と一緒に居続けたい、その想いだけで、真琴は”人”としてあり続けている。 「ただ、もう一度、熱を出したら、二度目はないと思ってください・・・ どうしようもありません・・・」
そして、美汐は、「たわいもない昔話でよければ・・・」と前置きした後で、かつて自分が体験したことを佑一に話し始めた。  < ものみの丘。 あの丘には、不思議な獣が住んでいる。 それを妖狐[ヨウコ]という。 それが姿を現すと、災いをもたらすと信じられてきた。 しかし、あの子達は、そんな忌むべき存在ではない。  子供のころ、ものみの丘で出会った子と友達になった。 一緒に遊んで、ずっとそんな楽しい日々が続くと思っていたが、別れの時は必ず来る。 段々と衰え、美汐の事も忘れ、そして、それを見ていることしかできなかった・・・ >
「相沢さんは、これはら、本当に辛い目に遭うんですよ・・・ それ以来、私は、こんな人間になってしまった。 相沢さんは、どうか、強い人間であってください・・・」
「心配するな。 俺は、元気が取り得の人間だ。」

佑一は、家に戻り、自分と真琴をつなぐ接点について名雪と秋子さんに話をする。 「真琴が、むかし拾った狐? 本気で言っているの?」と名雪。  「そう・・・ この子が、あの時の子なの・・・」と秋子さんは、佑一の話を疑わなかった。 佑一がむかし、狐を飼っていたことを秋子さんは気づいていた。  「鈴の音が好きだったものね。 この子・・・ 不思議ね。 おとぎ話のようなことなのに、少しも驚かないわ。 もしかすると、私自身、ずっとそう思っていたのかもしれないわね・・・」と秋子さんが言う。  そして、佑一は、しばらく学校を休み、真琴の相手をすることに決めた。
真琴と一緒に紙飛行機を折り、疲れたら、眠る。 そんな時間を過ごす。

「ゆういち。 ごほん、よんで・・・」 真琴が差し出したのは、あのマンガ。 ”恋はいつだって唐突だ・・・  絶対に迎えに来るから、その時は二人で一緒になろう、結婚しよう。 それまで・・・ さようなら” 「いい話だな。」と佑一。  すると、真琴は、佑一を見つめ、「けっこん・・・したい・・・ けっこん。 ゆういちと けっこん したい。 そしたら、ずっと、ずっと、いっしょに いられる・・・」とつぶやき、静かに瞼を閉じる。  次回 
<丘の上の鎮魂歌〜requiem〜> 



Kanon #10/2006-12-08
<丘の上の鎮魂歌〜requiem〜>


夕方、「じゃ、ちょっと出かけてくるからな。真琴。」佑一が、一人で出かけようとする。  しかし真琴が、寂しそうに佑一を見つめる。 そんな真琴に、「お母さんと一緒に遊びましょうね。」と秋子さんがボールを渡す。  そして、美汐に会うために、佑一は学校に向かった。

「アイツはもう、言葉を話さない。 笑うことも、怒ることも、ほとんどしない・・・ 人間らしい感情が失われかけているんだ。」 真琴のようすを美汐に話す佑一。 名雪や秋子さんも、真琴に優しくしてくれるが、 真琴はどこかで佑一にしか心を許していないことを感じ取っていた。 「アイツと会ってやってくれないか・・・ 辛いのは分かる。 でも、お前なら全てを理解して、アイツに接することが出来ると思う。」  そして、佑一は美汐に真琴を会わせることにした。 「初めまして。 天野美汐と言います。」 真琴は、佑一の背中に隠れて、ずっと腕にしがみついている。 「お名前は? 名前があるでしょ? ・・・おいで」と優しく声をかける美汐。  「ほら。 行けよ・・・」佑一も促す。 真琴は、一瞬躊躇うも、佑一を信じて、一歩佑一から離れた。 そして、佑一と美汐の真ん中に立った真琴に、今度は、美汐が近づき、そっと抱きしめる。 優しく髪を撫でる美汐。  「こうすると、落ち着くんです・・・」と美汐が言う。 「ほら。 お名前は? 思い出してごらんなさい。」と、もう一度、真琴に聞く。 真琴は、一生懸命、自分の名前を声に出そうとする。 
「まー ぅー まー・・・ まー こー とー 」
  「まこと。 いいお名前ね。 じゃ、この人の名前は?」
「ゅーぃ、ち。 ゅーいち。 ゆーいち。 ゆーいち! ゆーいち!ゆーいち!」
真琴は喜び、佑一に抱きつく。 名前を思い出せたことに、佑一も驚く。 しかし、これは一時的もの。 いずれ忘れるという。 それでも、佑一にとっては、十分だった。 「ありがとう・・・」と美汐に感謝する。  そして、再び熱が出たときが最後。 「この子が望んでいたことがあるのなら、どうか、叶えてあげてください。」

夜、佑一の部屋。 「なぁ、真琴、何かしたいこと無いのか? 何だって、付き合うぞ。」 そして、秋子さんと名雪と4人一緒に、外で食事をすることになった。  レストランでの楽しいひととき。 そして、帰り道、「さてと、アレ・・・ みんなでやらないか?」と佑一がプリクラを指さす。 狭い機械の中、家族が寄り添い、画面に向かう。 そんな様子を、一歩離れた外で、真琴がじっと見ていた。  それに気づいた佑一は、「真琴。 そんな所で何をしてるんだ? 今日は、見ていなくても良いんだよ・・・ 一緒に写るんだ。」と声をかける。 「どうしたの? 早くいらっしゃい、真琴。」と秋子さんと名雪も真琴を誘う。  みんなが真琴の名前を呼ぶ。 真琴は、笑顔になって、みんなのもとに駆け寄る。 「よし! 真琴が真ん中だ。」 「じゃ、撮るね。」 「おぅ!」 「3・2・笑って!」
花火もした。 真琴の笑顔が、火花に照らし出されていた。
そしてその夜、真琴は熱を出した。 魘され、苦しそう真琴の手を握る佑一。

真琴の眠るベットにもたれ掛かるようにして眠ってしまった佑一。 朝になり、真琴が目を覚ました。 佑一を突っつく真琴。  真琴が起きたことに気づき、「起きたのか! ちょっとは落ち着いたのか? よく頑張ったな・・・」と手を握る。 「何か、ほしい物はあるのか? 肉まん、買ってこようか?」と言う佑一に、目で訴える真琴。  「そっか。 お前は、俺と一緒に居れればいいんだったな・・・ それだけだったんだな。」 そう言うと、佑一は立ち上がり、真琴が一番好きだったマンガを取った。 「お前が一番好きだった本だ。 寝るんじゃないぞ。 これから、読んでやるから・・・」 
恋は何時だって唐突だ・・・  わかった。絶対に迎えに来るから。 その時は、ふたりで一緒になろう。 結婚しよう・・・” 
読み終わり、じっと佑一を見つめる真琴。 佑一は、真琴の言葉を思い出した。 ”けっこんしたい。 ゆういちと けっこんしたい・・・”  そして、そっと、「結婚しようか。 真琴・・・」と真琴に言う。 
そして、真琴と一緒に、部屋を出た。 「あら? 起きられるの? おいしい晩ご飯を作って待っているからね・・・」と秋子さんが声をかける。 真琴は、秋子さんに何か伝えたいが言葉にならない。 しかし、その真琴の目を見て、全てを察した秋子さん。  家を出ていく二人の背中に、「・・・行ってらっしゃい」と言うことが精一杯だった。 
玄関の先には、美汐が待っていた。 美汐に、学校に寄ってから、丘に向かうことを告げた。 あの丘は、真琴の生まれ故郷。 
学校で、最後に名雪との思い出づくり。 一緒に、小さな雪だるまを作った。 そして、「真琴。 帰ったら、一緒に遊ぼうね。 わたし、真琴といっぱいお話ししたいことがあるんだよ」と笑顔で手を振る。     ものみの丘に通ずる山道は、雪に覆われていた。 真琴の手を引いて、登る。 丘の上に上がると、雪はなく、春のような草野が広がっている。 「真琴もすわれ・・・」と佑一。 佑一のすぐ隣に座る真琴。  そして、紙袋から肉まんを取りだし、「肉まんだ。 好きなだけ、食べていいぞ」と佑一が真琴の口元に近づけると、それを、真琴が一口食べる。 
夕方になった。 「さぁ。 そろそろ始めるか・・・ 真琴起きてるか?」と佑一に寄り添うように居眠りをしていた真琴の、頬を抓って起こす。 「はじめるぞ・・・ ウェディングドレス一式買うなんて無理だから、これだけだ・・・」と佑一が一枚の白いベールを取りだし、 真琴の頭に乗せる。 そして、風に飛ばされないように、そっと真琴の手を添える。 
「私、相沢佑一は、沢渡真琴を、病めるときも健やかなときも、富めるときも貧しきときも、いつも側にいることを誓います。 ・・・これから先、いつまでも。 な? 真琴・・・」と真琴の顔を見つめる佑一。 真琴も、幸せそうな目で、佑一を見る。

これで真琴の願いは成就したと信じた。 子供ようにはしゃいで迷惑をかけて、本当に幸せだったのだろうか・・・ 嫌いな俺なんかと居て幸せだったのだろうか・・・ 全ては報われただろうか・・・  ほんとにみんな真琴が好きだった いつもケンカばかりをしていたけれど、俺もお前が好きだった。 それに気づいてくれればお前は幸せなはずだった。 でも、お前は、いつだって天の邪鬼だったから・・・ ちょっとだけ心配だよ、俺は。

「真琴、ずっと一緒に居ような・・・」 その時、強い風が吹いて、真琴のベールが飛ばされてしまった。 大切なベールが手の届かないところに消えてしまい、座り込んで泣き出してしまった真琴。  そんな真琴を背中から、やさしく抱き寄せる佑一。 「頭、撫でてやるから・・・」 真琴も落ち着いてきた。 そして、真琴の右腕に突いている小さな鈴を鳴らし合いっこして、二人だけの時間を過ごす。  最初に佑一が真琴の右腕を揺らして鳴らす。 次に、真琴が、自分の左手で鈴を揺らして鳴らす・・・ 
だんだんと、真琴の意識が遠くなっていくことに気づく佑一。 真琴が鈴を鳴らして次に自分が鳴らせば、真琴は眠らないことを信じていた。 しかし、最期の時は訪れる。 「ずっと、こうして遊んでいような・・・ 真琴の番だぞ。。。 チリンチリンって弾くんだ。。。」  真琴の瞼がだんだんと閉じていく。 そして、佑一の手から真琴の腕が力無く放れ、最期に真琴が鳴らした鈴の音は、それが地面に落ちた時。 鈴の音と同時に、真琴の姿も消え、春の野は雪の野に戻り、あの小さな鈴だけが、そこに残った。
学校で佑一は、美汐を呼び出す。 「お元気そうですね。 春になれば、またあの子達は、丘を走り回るんでしょうね・・・ 小さな営みの中、新たな命が生まれ、また、ひとの温もりに憧れる子が出てくるんでしょうね・・・ でも、仕方がないですね。 それが、あの子達の性分なんですから。 もしかすると、この街の半分くらいが、あの子達なのかもしれませんよ。  気づいていないだけ。 もしかすると、この私も・・・ そして、あなたも。」という美汐を一瞬本気にしてしまいそうな佑一に、「冗談です」と戯けてみせる美汐。  「でも、あの丘に住む狐たちが、みんな不思議な力を持っていて、そのみんなが集まったら、飛んでもない奇跡を起こせるって思いますよね?」と美汐。 なんの事か、よく分からなさそうな佑一に、「夢ですよ夢。 相沢さんは現実的すぎます。」と笑う。
「・・・俺達は、夢を見ていたんだよな・・・ そこから帰ってきた。。。」
「もし。。。 もし、奇跡を起こせたら、相沢さんなら何をお願いしますか?」
「・・・そんな事、決まってるさ・・・」


降り積もる雪が、春になって桜の花びらに変わるころ、あの丘の上には・・・

春が来て、ずっと春だったらいいのに・・・

次回 
<光と影の間奏曲〜intermezzo〜> 



Kanon #11/2006-12-15
<光と影の間奏曲〜intermezzo〜>
夢。 夢に終わりが無くなった日。 いつもの場所で、いつものように、、、 ずっとずっと、ただ待つことしかできなくて。 だから、今も待ち続けている・・・

真琴の居なくなった部屋。 「秋子さん。 この部屋はこのままにしてもらっても良いですか?」という佑一に、名雪と秋子さんも同じ考えだった。 いつ真琴が帰ってきても良いように。


普段の生活がもどった佑一。 教室に入り、北川と妙な挨拶を交わす。 「よぉ北川。 いつも同じ服だな。」「おぅ相沢。お前も同じだな。」「ははは。 俺のは、こう見えても毎日着替えているのだ!」 
そして、栞もまた、校庭にやって来ていた。 「そんな事を言う人は嫌いです」と言う栞に、アイスを買ってきて上げる佑一。 寒空の下、美味しそうにアイスを食べる栞。  昼休み、佑一は、以前のように屋上への踊り場に向かうが、誰もいなかった。 仕方なく、教室に戻ろうとすると、廊下の窓ガラスが割れている所があった。 どういう訳か、舞が夜中に忍び込んで割ったと噂されているらしい。  そして、その件で職員室に呼び出されているとか・・・ そんな噂話を聞いた佑一は、急いで職員室に向かうと、心配そうに佐祐理も来ていた。 「舞は、前にも、学校の窓を壊したことがあるんです。 その時も、理由を教えてくれなかったんです。 その後、変なことがあると、舞が疑われてしまうんです・・・」と俯く佐祐理。  しばらくすると、舞が職員室から出てきた。 「叱られた。」と舞が言う。 とりあえず、停学とかはなかったらしい。 「佐祐理。 お腹空いた。」と舞。 早速、いつもの場所で、お昼を食べるために、舞と一緒に向かう佑一。 しかし、 廊下ですれ違いざまにヒソヒソと後ろ指をさされている舞に、なんとかしないと、と心配になってきた佑一。 
放課後。  佑一に名雪が近づき、「一緒に帰る約束をしてたんだよ。」「誰が?」「佑一が」「誰と?」「私と」「何で?」「約束したから」「誰が?」「佑一が」「誰と?」「私と」「何で?」「約束したから」「誰が?」・・・と堂々巡りな会話が始まる。  名雪と一緒に歩きながら、どうやったら人気がでるのか、その方法について聞いてみた。 どうやったら、女の子が女の子らしく見えるか、について。 そんなとき、掲示板に学園舞踏会のビラを見つけた。 名雪を昇降口で待たせ、佑一は、舞と佐祐理の所に向かい、 そのビラを見せる。 「・・・近すぎて見えない。」 舞の顔にピッタリとビラをくっつけて、「これに出るんだ!」宣言をする佑一。 「ドレスアップして出場すれば、一気に人気エクスプロージョンだぁ!」 しかし、問題は、どうやってドレスを手配するかということ。  「秋子さんか名雪に頼むか・・・」とそのとき、ようやく名雪をずっと待たせっぱなしだったことを思い出す佑一。 急いで昇降口に向かうと、名雪が待っていた。 「・・・嘘つき」

お詫びに、名雪に苺サンデーをおごる佑一。 ようやく名雪の機嫌もなおる。 帰り道、名雪にドレスを持っていないか聞いてみるも、答えはノー。 「あと持っていそうな人は・・・」と振り向くと、あゆがまたぶつかってきた。  「とりあえず聞くが、お前、ドレス持ってないよな?」 「なんで?」 「お前は何を聞いていたんだ? 舞踏会出場用のドレスだ。 そんなことじゃ、お前は、いつまでたっても”うぐぅ”のままだぞ!」と支離滅裂なことを言い始める佑一に、 訳が分からないよと意気投合する名雪とあゆ。 しかし、お互い、面識がないことに気づいて、「・・・だれ?」 お互い、秋子さんを通して間接的に近くには居たことを知った。 「あゆちゃんって呼んで良い?」「うん!」「わたしの事は、なゆちゃんって、よんでね?」「それは、ややこしくなるから、やめてくれ」と佑一。
家に帰ると、秋子さんがピロを抱っこしていた。 「見て!ピロが帰ってきたのよ!」 そのネコを見たあゆが、「あれ? たいやきを盗んだネコだ!」 「なんだ、コイツは、お前の共犯か!」と佑一。
一緒にごはんを食べていくことになったあゆが、家に電話をかけても、誰も出なかった。 あゆの両親は、旅行に出かけていて、誰もいないことをやっと思い出したあゆ。 両親が帰ってくるまで、秋子さん宅に居候させてもらうことになった。  真琴がいなくなって、寂しくなりかけていた雰囲気が、あゆのおかげで、ちょっと元気が出てきた。 「・・・真琴さんはどうしたの?」 「帰ったよ。」 「自分のウチに?」 「ま、そんなところだ・・・」 「ふーん。 そうなんだ。 もう一度、お話したかったな」

「家族が一人減っちゃったでしょ。 お母さん、凄く寂しそうだった。 そして、私も。 でも、あゆちゃんのおかげで、とっても賑やかになって、うれしい。 それに、わたし、あゆちゃんととっても良い友達になれそうだよ。」と名雪。 

夜、佑一は、再び学校に向かう。 舞に、コンビニ寿司を差し入れる。 「何から、喰う?」 「大トロ」 「んなものは無い! ネギトロで我慢しろ!」 そんな舞に、なんで一人で戦っているのか理由を聞いてみるが、舞の返答は、誰にも信じてもらえない、だった。  「少なくとも、佐祐理さんは信じてくれるぞ・・・」と言うが、舞は、佐祐理には心配をかけたくないらしい。 

深夜、家に戻ると、みんな寝静まっていた。 名雪とあゆが同じ布団に入って、寝息を立てている。 
翌朝、あゆがお礼と称して、朝ご飯を作るが、炭化している。 けっきょく、朝ご飯は抜き。 学校へ行き、名雪は寝て過ごし、佑一は今日も栞に手を振る。 昼休み、佐祐理さんが佑一の教室にやってきた。 舞のドレスが見つかったとの事。  喜ぶ佑一に対して、興味なさそうな舞。 「もっと喜べよ! ∩( ・ω・)∩ばんざーい」 
夜の学校、今日の差し入れは、美味いの安いの牛丼だ。 もぐもぐと牛丼を食べる舞に、「よし! yesは”はちみつクマさん”だ。 返答だよ返答。 noは”ぽんぽこタヌキさん”って言うんだ!」とか言っていると、舞の表情が変わってきた。  突然、牛丼を佑一に託し、剣を握り、走り出した。  次回 
<畏敬の円舞曲〜waltz〜> 



Kanon #12/2006-12-22
<畏敬の円舞曲〜waltz〜>
夢。 夢の中にいる。 幻想が聞こえる・・・ 遠くから近くから、さざ波のように絶え間なく響く。いそがしそうに歩く大人たち。 ベンチに座る小さな姿に気づくこともなく・・・

「わぁ かわいい人形」幼い頃のあゆが、UFOキャッチャーの中の小さな天使の人形を見て喜ぶ。 それを聞いて、幼い佑一が勇んで挑戦をする。 しかし、2000円の損失。 ・・・そんな夢だった。  そして、ふと起きると、あゆが廊下で不審な挙動をしていた。 「金目のものでも探していたのか?」と佑一。 結局、トイレに行きたかっただけらしい。  時計は午前4時。 ベランダに出てみると、満天の星空。 ベランダから身を乗り出して星空を仰ぐあゆ。 佑一は、ベランダの柵から離れて壁にもたれている。 佑一は、高所恐怖症らしい。  星空を見上げながらあゆが言う。 「名雪さんって、綺麗な人だよね。 やさしいし・・・ ぼくも大きくなったら、名雪さんのようになれるかな・・・」 「名雪は、俺とお前と同い年だぞ」と佑一がボソっという。  「えっ!」と驚きのリアクションの後には「うぐ・・・ ショック」と落ち込むあゆ。 「落ち込むな。 あゆにはあゆの良いところがある。 電車に子供料金で乗れる。 何年たっても昔の服が着られる。 お子さまランチを注文しても恥ずかしくない。」
朝、寝ぼけた名雪がテーブルに座って、「おぉーおぉ」とやっている。 名雪と佑一は学校に向かう。 佑一は、学校に行く途中に佐祐理と舞に会う。 今日は、舞踏会の日。 「はちみつクマさん」「ぽんぽこタヌキさん」ルールをしっかり遵守する舞。  そして、栞は今日もザ・カップ バニラ味を非常に美味しそうに食べる。 教室に戻ろうとすると、1年生の子が佑一に声をかけてきた。 「あの人とお知り合いなんですか? どうして学校に来ないんですか?」 「風邪で休んでいるんだとさ」と答える佑一。  「風邪じゃないです。 だって、1学期の始業式の日からずっと休んで居るんです。」と言う女の子。 始業式の日に倒れて以来ずっと休んでいるらしい。 「最初の日に、誰も知っている人が居ないときに、話しかけてくれたんです。 で、いま、美坂さんの事を見て・・・」と女の子は心配そうに話をする。  「美坂?」聞き覚えがある苗字に驚く佑一。 

教室に戻ると、舞踏会の実行委員の北川が、水曜どうでしょうで大泉洋が騙されて連れ出されたサイコロの旅で来ていた”秀樹の衣装”のような格好で、ポーズを取っていた。 「これで、会場の視線を独り占めだぜ!」 しかし、香里は出ないと知って、ショックの北川。  香里はさっさと教室を出ていってしまった。 そんな香里の後を追う佑一。 「お前。 栞っていう妹いるだろ?」 「何か勘違いしているでしょ。 私は、一人っ子。 さよなら」と言う香里。 佑一は、名雪にも、香里に妹がいないか聞いてみるが、知らない様子だった。  「香里って、家族のこと、あまり話してくれないから・・・」

家に帰った佑一。 夕方の舞踏会まで。テレビを見る。 <潜入!人跡未踏の密林へ!>これは、藤岡弘。探検隊かw ぼーっとテレビを見ていると、次第に瞼が重くなり、また夢を見た。 幼い頃の思い出。  名雪にお金をかして欲しいと懇願している。 名雪から借りた1000円で、再びUFOキャッチャーリベンジ。 そして、ゲットできた天使の人形をあゆに渡す。喜ぶあゆの姿を見て、 「元気になったんだな。 最初は、全然笑ってくれなくて、、、 お母さんが居なくなったって言ってさ。」 「・・・まだ、吹っ切れないけど。 一生かかっても無理だと思うけど。 でも、悲しみを忘れることは出来ると思うんだよ。 だから、佑一くんには、本当に感謝しているよ・・・」  ハッと気が付くと既に時刻は4:48。 最後に時計を見たときから1時間も経ってしまっていた。 「やばっ!」と飛び起きる佑一。 

学校の体育館に急ぐ佑一。 タキシードに着替え、いざ突入。 舞と佐祐理を捜す。 目の前に薄いピンクのドレスを着た舞が居た。 「どちらからいらしたお嬢様で?」と佑一。 すると、舞が歩み寄り、佑一の頭にチョップをいれる。  一瞬呆気にとられる「・・・舞が、ツッコミをいれる」と佑一。 「あははー」と佐祐理。 すると、「あなたもこの行事に参加するとは・・・ 倉田さんに借りた衣装か? 良いご身分だな」と生徒会長が声をかけてきた。  「警告して置くが、川澄さん。 万が一、この行事を台無しにするようなことがあれば、学校側に掛け合って容赦なく処分を行う。」と言って去っていった。 
その後、ホールの端っこで佑一は、ヤケ食い。 「舞。。。 誰かと踊ってきたらどうだ?」と言うと、「わたし、佑一がいい」と舞が答える。 「私、こういう場所は不慣れだし、佑一に側にいてほしい。。。」と舞。  「慣れて無くたって関係ないさ!」と舞に手を刺しだす佑一。 舞の手を取り、ホールの中心に向かう佑一と舞。 ワルツのリズムに合わせて、ステップを踏み出す。  「けっこう、踊れるじゃないか。 運動神経、いいんだな。」 「だんだん、慣れてきた。。。」 周りの人たちも、舞の美しさに気づき始める。 「。。。ありがと、佑一・・・」
しかし、しばらくすると、「来た!」と舞が呟く。 テーブルの上に置いてあったグラスが、勝手に割れる。 そして、窓が次々と割れていく。 佐祐理に何かが当たって、突き飛ばされた。  そして舞は、剣を持って現れた。 さっきまでワルツのリズムで踊っていたホールで剣を振り回す。 止めるよう叫ぶ佑一。 しかし、周りの人間には、舞が戦っている相手が見えない。  一気に飾られたホールは荒らされてしまった。 「やってくれたな! これは、問題だぞ!!」と生徒会長が大声を上げる。 次回 
<あぶなげな三重奏〜trio〜> 



Kanon #13/2006-12-29
<あぶなげな三重奏〜trio〜>


「佑一。舞踏会で何かあったの?」と舞踏会が終わってから様子がおかしい佑一を心配する名雪。 そのとき、信号待ちをしていた佑一と名雪の脇を、北川が走っていった。  呼び止める佑一。 何でも、北川は昨日の舞踏会の主催者として、後始末のため学校に急いでいるという。 そして、生徒会長は、舞踏会を荒らした張本人の舞を退学にさせると言っているらしい。 

佑一は、舞の事を弁解するために生徒会室に入ろうとするが、中から佐祐理の声が聞こえてきた。 必死に舞を庇おうとしている。 「刀を振り回した理由を知りたいな・・・」と言う生徒会長に、 佑一が「それは、アトラクションだったんだ」と生徒会室に飛び込んだ。 それに北川もアドリブで話を合わせる。 とりあえず、生徒会長を納得させることが出来た。 「北川・・・ お前って、良いヤツだな」と佑一。  しかし、実際、舞踏会で何が起こったのかは、分からない。
また、学校に栞が来ていた。 「佑一さんって、優しい人ですね。 こうやって、毎日、私と会ってくれるんですから・・・」 佑一は、自分のクラスに栞と同じ苗字の美坂香里という子がいることを話した。  「佑一さん。 お姉ちゃんと同じくラスだったんですか?」と栞。 しかし、香里は確か自分は一人っ子だと言っていたはず・・・ 佑一の反応に、「お姉ちゃんと同姓同名の人がいるんです。 よく間違われます。」と慌てて付け加える栞。 

「一歩間違っていたら、これが、3人で食う最後の昼食になるはずだったんだな・・・」といつもの踊り場で、佑一がしみじみ言う。 教室への帰る途中、舞と佐祐理を見かけた生徒会長が「いいご身分だな・・・」と言ってきた。  「今度、何かやらかしたら、川澄君を庇う君も、退学の対象になるからな」とその矛先を佐祐理にも向ける。 しかし、「佐祐理を傷つけることは、絶対に許さないから」と舞が生徒会長を睨みつけると、生徒会長はそれに怯んで去ってしまった。 
放課後、屋上で、佑一は、ひとりで木刀を振っていた。 「これでは、心許ないな・・・ イノシシか犬でも出てきてくれれば・・・」と呟くと、背後からバケツが飛んできた。 振りくいた瞬間、顔面直撃。 「何すんだよ!」と佑一。 「犬さん。わん。」と舞。  佑一は、すこしでも、舞の助けになろうと、剣道部から借りてきたらしい。 そして次には、消火器が飛んできた。 「イノシシさん。 もー。  全然、ダメ。」と舞。 

夕方、街を歩いていると、あゆが声をかけてきた。 あゆも、学校帰り そして 探し物をしている。 その夜、あゆと一緒に、学校に行く。 いつものように、舞が剣を持って立っていた。  「舞さんって、不思議な人だね。 魔物って何匹いるの? 5匹?」とあゆ。 佑一は、あゆの探し物のヒントを舞から得るために、連れてきたことを話す。 しかし、舞は、「私には、何も言えない。 たぶん、私が見つけても、意味がない・・・」と答えるだけだった。 
佑一は、あゆを返した後、魔物が現れた。 魔物に飛びかかる舞。 それに加勢しようとする佑一。 しかし、舞は佑一に動かないように言うが、それを無視して佑一は魔物に木刀で向かう。 そして、舞が止めを刺す。 魔物が消えた後、舞は、 「動かないように言ったはず。 余計なことはしないで欲しい。」と佑一に言った。 そして、「帰る。 今日は、もうでないから・・・」と佑一に背を向けて歩いていってしまった。 その背中に向かって、佑一が叫ぶ 「お前はそういうヤツだよな! お前みたいなヤツを心配する俺がバカに思えてくるよ! でもな、俺は明日も来るぞ。 俺は、バカだからな! 俺は、お前といることが好きだからな! 俺も、佐祐理さんもお前のことが好きだからな!」

翌朝、名雪が平和な顔で寝ている。 「コイツを見てると、悩んでいることが、どーでも良くなるよな・・・」と佑一。 
昼休み。 佑一は佐祐理に、舞とケンカ中だと話をする。 佑一は、なぜ舞と佐祐理が仲良くなったのかを聞いてみた。 そのきっかけは1年の時だった。 野良犬に自分のお弁当を分けている舞の姿を見た佐祐理が、自分のも と差し出した。 そして、お弁当が無くなってしまった二人は、学食で一緒に牛丼を食べた。 それが、きっかけだった。 
放課後、佐祐理は佑一を呼びだした。 明日は、舞の誕生日だという。 一緒にプレゼントを買いに行くことになった。 「内緒にしてて、ビックリさせてあげようと思うんです。」と佐祐理。  「この際、思いっきり女の子らしいものをあげよう。 この商店街で一番デカイぬいぐるみとか」と佑一。 そして、行き着いたのは、1:1スケールのオオアリクイ。 それに、キュピーンときた佐祐理は、それを背負って帰っていった。  その巨大なぬいぐるみを背負った女子高生を見て、「・・・異様だ」と佑一。

その夜も学校に行く佑一。 舞に、佐祐理以外には友達とかいないのか?と尋ねる。 「ずっと昔に、一人だけいた。 でも、いなくなった、他の人と同じように・・・」 その時、魔物が2匹現れた。  「魔物は、佑一を狙っている。 私じゃない。 佑一、あなた、誰?」   次回 
<ひびわれた協奏曲〜concerto〜> 



Kanon #14/2007-01-05
<ひびわれた協奏曲〜concerto〜>


「ちなみに、人参だってちゃんと食べられるよぉ」とまた名雪が寝ぼけている。 その横で、ずらっと並べられた秋子さん特製のジャムにあゆが喜んでいる。  「そして、これが、私の特製のジャム」と満面の笑みで、謎ジャムを取りだした。 その瞬間、寝ぼけていた名雪の表情が一瞬にして、恐怖の表情に変わり、名雪と佑一は、立ち上がった。  そして、「あゆ・・・ 短いつきあいだったな・・・」とお別れの言葉を言う佑一。 名雪と佑一は、静かに家を後にした。 あゆの背後で、大量のジャム(らしきもの)がパンに塗り込められていく音が響いていた・・・

名雪も佑一も、秋子さんの謎ジャムには、生き物としても本能が危険と反応するらしい。 そんな話をしていると、名雪が、紙袋からウサギの耳のカチューシャを取りだした。 以前、佑一が女の子らしくするにはどうすれば良いのか? と聞いたことに対しての名雪の答えらしい。  そのウサミミを自分の頭に乗っける佑一。 「これを、どうしろと・・・」と困る佑一。 「演劇部の友達がかしてくれたの。 なんだか、嬉しそうじゃないね・・・」と名雪が言う。  「嬉しいよ! いやっほぅ!」と叫ぶ佑一を見ていた通りすがりのおばちゃんが、じろじろ見ている。  そのとき、佑一の脳裏に一瞬、何かが蘇った。 「何だったかな・・・」
昼休み、いつもの場所に行ってみると、舞だけが座っていた。 佐祐理は日直の仕事があるらしい。 佑一は、昨日舞が言っていた、「魔物が自分を狙っている」ということがどう言うことなのかを、聞いてみた。  佑一が来るまでは、魔物はそう頻繁に現れる物では無かったらしい。 「佑一が来てから、魔物がざわめくようになった」と舞が言う。 話すこともなくなり、しりとりを始めた。 しりとり→りんご→ごりらさん。  リベンジ。 りす→すこんぶ→ぶた→たい→いびき→きりんさん・・・きりん。  そんなことをやっていると、佐祐理が来た。 「あははー。 舞としりとりをするのは、たいへんですよ。 動物には、”さん”を付けちゃうから。」と佐祐理。  舞は、しりとりが大好き、でも、すぐに負けちゃうらしい。 
放課後、佑一は、魔物を倒すための鍛錬をするため、屋上に向かう。 木刀を振り回していると、舞が無言でやって来た。 舞に気づいた佑一に向かって、舞は竹刀を向けた。  「実戦訓練か・・・ ありがたい」と言い終わる前に、舞の激しい攻めが佑一を襲う。 突き飛ばされる佑一。 「・・・どうやら、手加減しなくても良いようだな」と木刀を支えに立ち上がる。 舞に飛びかかるが、舞にヒラリと交わされる。 そして、「遅すぎ・・・」と一言。  「佑一は、自分が弱いことが分かっていない。 それが分かれば、少しは良くなる・・・」 懲りずに、舞に飛びかかる佑一。 舞に圧倒され、結局は、突き飛ばされてしまった。  そこへ、佐祐理がやってきた。 「ちゃんばらごっこですか? 佐祐理にのちょっとやらせてください。」という佐祐理に、「遊びじゃない。」と舞が言う。 「なら、佐祐理も本気になります!」と木刀を構える。  しかし、舞の一振りで木刀は飛ばされ、その場に座り込む佐祐理。 「あははー。 わたし、邪魔かな?」 「邪魔」と無慈悲に答える舞。 その言葉に、佑一に頭を下げて走り去る佐祐理。 「私は、佐祐理のことが好き。大好き。」と呟く舞。 「不器用だよな。お前・・・」

夕方、街を歩いてる佑一に佐祐理が声をかけてきた。 喫茶店に入り、お話をする二人。 パッヘルベルのカノンが流れる喫茶店。 佐祐理は、屋上のことを最初に佑一に謝った。  「舞と佑一さんが黙っているのなら、佐祐理も聞かない方が良いんですよね」と佐祐理が言う。 佑一は、その言葉に、佐祐理はすでに勘付いていること確信した。 そして、佐祐理はなぜ舞と仲良くしているのか、その理由を聞いてみた。  「舞のことをいつも庇って・・・姉のように」という佑一に、「佐祐理は、実は、本当のお姉さんだったことがあるんですよ」と自分の過去について話を始めた。

佐祐理には、弟が居た。 佐祐理が、父親から厳しくしつけられたように、弟に対しても厳しく接しようと決めた。 弟が泣いたとき、本当は、頭をなでであやしてあげたかった。 弟は発育が遅い子供だった。 幼稚園に入っても、言葉を発することもなく、滅多に笑わなかった。  幼稚園でもいつも一人で泣いていた弟を、佐祐理が毎日送り迎えをしていた。 甘やかすことは弟のためにならない、と信じていた。 でも本当は、もっとやさしくしてあげたかった・・・笑顔が見たかった・・・ しかし、弟は病気にかかり入院した。 病気は良くなることもなかった。  そして、幼い佐祐理は一度だけ悪い子になることを決意した。 お菓子やおもちゃを買い込んで、病室に忍び込んだ。 眠っている弟を揺り起こす佐祐理。 目を開けた弟の最初のリアクションは、姉に対する恐怖の表情だった。  「怒りに来たんじゃないよ。遊ぼう」と弟に微笑みかける佐祐理。 一緒にお菓子を食べた。水鉄砲を取りだし、弟の膝の上にのでてあげた。 元気になったら、お菓子を一緒に食べる。 元気になったら、水鉄砲で一緒に遊ぶ。  「お姉さんはね、ホントは運動神経いいんだよ」 
「うん」小さく頷く
「お姉さんはね、ホントは楽しいこといっぱい知っているんだよ」
「うん」
「カズヤの事、ホントは大好きなんだよ」
「うん」大粒の涙が、頬を伝う
それが二人で遊んだ最初で最後の思い出だった・・・

カズヤが死に、そして、佐祐理は自分自身を名前で呼ぶようになった。 自分を客観的にしか見れなくなってしまった。 「笑うことも出来なくなりました・・・」と佐祐理が言う。 ふと、自分の左手首に残るリスカの跡を右手で覆い隠す佐祐理。  「また笑えるようになったのは、舞に出会ってからのことです。 佐祐理は、舞を助けてなんていません。 救われたのは、佐祐理のほうです。 舞に初めてあったときに感じたんです。 この子と一緒にいよう。 一緒に居たいって・・・」 「そうか・・・」と初めて佐祐理の過去を知った佑一。
  Kanon。 同じ旋律を繰り返しながら、やがて美しい和音を響かせる音楽。 「Kanonのように、一見、違いの無いような毎日を送りながら、でも、少しずつ変わって行けたらいいですね。 そうすれば、いつか、カズヤの事も、悲しい気持ちだけじゃなく、思い出せるかもしれない・・・」



佐祐理は舞の誕生日の為に一度帰って、お料理の準備をする。 「準備が出来たら、電話してくれ」と佑一が言う。 
佑一が家に戻ると、朝の謎ジャムの影響で神妙な面持ちのあゆが待っていた。 「あれは、普通の食べ物とは違う何かのような・・・」と涙目で解説する。
なかなか佐祐理からの電話が入らない。 舞が学校に向かってしまうのではないかと心配になってきた。 佑一は、一度学校に向かって、舞に家に戻るように伝えることにした。 しかし、入れ違いで水瀬家に佐祐理から電話が入ってしまった。  「待て。 俺と連絡が付かなかったら、佐祐理さんは、俺を捜すはずだ。 もし、佐祐理さんが俺と舞が学校に居ることを知っていたら・・・」焦る佑一。 佑一は急いで秋子さんに電話で確認すると、すでに事遅し。 佐祐理は、佑一より先に学校に到着してしまった。  大きなオオアリクイのぬいぐるみを背負って、夜の学校を舞を探して歩き回る。 灯りのついていた部屋に入る佐祐理。 その瞬間、何かが佐祐理に向かって迫ってきた。 「何?」と振り向く佐祐理。 
佑一は急いで学校に向かう。 「バカだった。 あと10分、待っていれば」 学校に着くと、舞が呆然と立ちつくしていた。 そして、その場に倒れ込み、痙攣している。 そして、その先に佑一が見たものは、辺りに散乱したお弁当と血まみれで倒れている佐祐理の姿だった。 

病院に搬送される佐祐理。 当分の入院が必要とのこと。 病院の帰り道、突然、舞が佑一が持っていた剣を奪い取り、辺り構わず斬り始めた。 「私のせいで! 私のせいで! 佐祐理は傷ついた」と取り乱す舞を後ろから押さえ込む佑一。 「違う。 俺が悪い。 もっと早く、佐祐理さんに本当のことをはなしていれば良かったんだ!」と佑一。  「私だけ、こうして、のうのうと傷つかずに!」と自らの喉に矛先を付き当てようとする舞。 佑一は、舞から剣をはじき飛ばすと、「自分を傷つけて、それでどうなると言うんだ? 失うだけだぞ! 失いたいのか? 佐祐理さんや俺と作ってきたものを!!」と舞に言う。  「・・・失いたくない・・・」 「じゃ、今から学校に行って、全てのケリを付けるぞ。 自分を責めるのは、それからでも遅くはないはずだ。」  次回 
<かくれんぼんの小奏鳴曲〜sonatine〜> 



Kanon #15/2007-01-12
<かくれんぼんの小奏鳴曲〜sonatine〜>


佑一は、魔物と戦った後の舞の躰に、痣が出来ていることに気が付いた。 「佑一。 私を助けて・・・」舞が言う。 佑一は舞を背負い、いつもの屋上への踊り場まで来た。  「俺は、何をすればいい?」と聞く佑一。 「側にいてくれるだけで良い。 そうすれば、囮になる。」 「囮でも餌でも何でもやってやるから、しばらくじっとしていろ。」と言う佑一。  舞は、佑一の肩にそっともたれ掛かる。  佑一:「・・・なんだか、かくれんぼみたいだな。」
  舞:「かくれんぼ?」
佑一:「子供の頃、やらなかったか? 鬼が来るまで、じっとこうして息を潜めている。 やったことないか?」
  舞:「やったことある。 ずっと昔に一人だけ友達が居た。 でも、その子も、私から逃げた・・・」
その時、魔物が迫ってくる気配に気が付いた。 佑一は、魔物を誘き寄せ、舞は裏庭に向うよう佑一に言う。  裏庭に出てくる魔物を、屋上から舞が待っていた。 屋上から飛び降りながら魔物に向かって剣を突き刺す舞。 魔物は光の粒となって消える。  雪の上に転げ落ちた舞が立ち上がり、佑一が声をかける。 「よう。舞。」 「よう。佑一。」と舞も答えるが、すぐに倒れてしまった。 そして「牛丼。食べたい・・・ お腹減った。」  舞を教室まで連れて行き、自分のコートを舞に掛け、牛丼を買いに向かう。 しかhし、戻ってくると、教室には舞は居なかった。 「まさか。 まだ1体残っていたのか! 俺を逃がすために」  舞を探しに教室を出ると、佑一に魔物が迫ってきた。 そして、その魔物の影の向こうに見たものは、幼い頃の舞の姿だった。 

気が付くと、夕陽に黄金色に輝く小麦畑の中に立っていた佑一。 そして、幼い頃の舞と舞の母親との会話が聞こえてきた。
「動物園? うさぎさん、居る?」 「舞は行ったこと無いでしょ? お母さんが元気になったら、連れていってあげる。」 舞の母親は病気で入院していた。
舞は、雪を懐に抱いて母親の病室に向かった。 「頑張って持ってきてくれたのね。 じゃ、良いものを作ってあげましょうね」と母は、病室に飾ってあった南天の葉とその赤い実を取り、 白い雪に添えた。 「ウサギさんだぁ!」と大喜びの舞。 
しかし、母の病状は良くはならない。 ある日、「舞。今日、動物園に行こう。 ・・・今日しかないからね・・・」と母が行った。 こっそり病院を抜け出すが、「ちょっとだけ休ませて・・・」と近くのベンチに座る。  心配する舞は「やっぱり病室に戻ろうよ」と言うが、母は「私も、舞と動物園に行きたいし・・・」と言う。 目を閉じて、しばらくすると、舞が母を呼ぶ。 「ごめんね。舞。 寝てたみたい・・・」 「ううん。いいよ。でも、見て!」  母の周りには、舞が作ったたくさんの雪のウサギ。 「動物園だよ! 舞とお母さんの!!」 「ほんとにすてきな動物園ね」と涙を流す母。 そして、その夜、母の病状が悪化し、生死の境を彷徨う。  母の手を握りしめる舞。 朝になって目覚めると、母の病気は良くなっていた。 その不思議な舞の力はメディアを通じて知れ渡り、そして、オカルト親子扱いされて、その町には住めなくなってしまった。 

新しく移り住んだ町で出会った子が、佑一だった。 そして、佑一と一緒に遊んだのが、この小麦畑。 ふたりで、かくれんぼをして遊んだ。 小麦に隠れて見えない舞の頭に、ウサミミを乗せて走り回った。  舞は、佑一にも自分の不思議な力を見せた。 「その力のおかげで、お母さんを元気に出来たんでしょ? いつか好きになれるよ、その力。」
夏休みが終わり、佑一が帰ってしまうことを知った舞は、「助けて欲しいの! 魔物がくるの!! いつもの遊び場所に、ほんとに来るの! 私一人じゃ守れないよ! 待ってるから! ひとりで戦っているから!」と佑一に必死に訴える。 

全てを理解した佑一。  「舞。 魔物なんて居ない。 最初からどこにも居なかった。 魔物はお前が生み出したものだ。 魔物を倒すために傷ついていったのは、そのせいだ。  お前は、子供頃、友達を失いたくなくて”魔物が出る”と嘘を付いた。 そして、その嘘を自分自身で信じ込んだ。 その友達は、俺だったんだ。」と舞に言う。  「あの男の子は、私から逃げた。 私を怖がって・・・ 私には分からない」と舞が言う。 そして、佑一はウサミミを取りだし、舞の頭に乗せた。  「舞。 今日からは普通の女の子だ。 長い夢を見ていたんだ。 もう、戦わなくていいんだ。 剣を捨てるんだ。」  「剣を捨てた私は、本当に弱いから。 佑一や佐祐理に迷惑をかける・・・」と俯く舞。 
「ありがとう。 佑一。 ほんとうにありがとう。」と佑一に言うと、舞は、握りしめていた剣を握り替えし、その矛先を自分の胸に返し、一気に突き刺した。  「ごめんな。遅くなって・・・」舞を抱きしめる佑一。 その時、また、あの小麦畑が広がった。
「いいの。 ちゃんと来てくれたから。 今度は、どこにも行かない?」と幼いときの舞が佑一に聞いてきた。
「あぁ。 俺達は友達だから。」と答えると、幼い舞が微笑み、舞の傷が癒えていた。
「君が、助けてくれたのか?」
「きっと、今なら帰れるから。 受け入れてくれると思うから。 私は、舞の力の欠片。 でも、こう呼んで欲しい。”希望”って・・・」
 
「起きろ・・・ 舞。 夢から覚める時間だぞ」
  次回 
<真夜中の聖譚曲〜oratorio〜> 



Kanon #16/2007-01-19
<真夜中の聖譚曲〜oratorio〜>


佑一はあゆと一緒に、舞と佐祐理の見舞いに病院に行く。 「過去のことより、これからのことを考えないとね」と笑顔で答える佐祐理。  舞は、「まだ、頭が整理できていない。でも、少しずつでも落ち着いて考えられるようになるとおもう。」と現実を受け入れようと頑張っている。 そして、 「辛いことから目を背けようとしてる人が、佑一の側にいる。 力になって欲しい。。。」と最後に舞は言い加えた。 

翌朝、まだ寝ている秋子さんの替わりに、あゆが朝ご飯を作っていた。 出てきたものは真っ黒焦げのトースト。 「やっぱり、ごはん作るのって難しいね!」とあゆが言う。  佑一は、朝ご飯を諦めて学校に向かおうとすると、後ろからあゆが、追いかけてきた。 「秋子さんが! 秋子さんが! ボクのお母さんみたいに!」とかなり焦っている様子。  佑一も慌てて家に戻ると、ちょっと熱っぽそうな秋子さんが起きてきていた。 「一日、寝ていればよくなると思いますから」と言う秋子さん。  学校に着くと佑一は名雪に、秋子さんが風邪を引いて寝ていることを教えた。 ひとりで看病をしているあゆが心配になり電話をすると、あゆは、薬を買いに行きたいけど薬局の場所が分からないと言っていた。  名雪は、薬局の場所を教えてあげた。 それでも心配で、休み時間ごとに電話して、状況を確認する佑一と名雪。 

昼休み、佑一は栞と会っていた。 「明日の日曜日、時間あるか? 前に言っていただろ、一緒に遊ぶって」と栞を誘う佑一。 嬉しそうな栞。

家に戻ってみると、あゆの奮闘具合が、その部屋の散らかり様から見て取れる。 秋子の部屋にノックをして入ると、秋子さんは起きていた。 その傍らでは、あゆが寝息を立てていた。  「この子のおかげです」とあゆの髪を撫でる秋子さん。 日曜日。 栞と一緒に街を歩く佑一。 「お前の風邪の具合は、どうなんだ? お前も早く治して、学校に出て来いよな」と言う佑一に、「・・・そうですね」と答える栞。  栞は、大事そうにスケッチブックを抱えていた。 栞は画を描くことが趣味らしい。 「佑一さんの似顔絵でも描きましょうか?」 「俺がモデルでいいのか?」 栞はちょっと考えて「・・・そうですね、やめましょうか」 「うぐー」と佑一。  そして、「あれって、ゲームセンターですよね? 私、入ったこと無いんです。」と栞が立ち止まった。 「まだ行ったこと無いのか? お前も、狐かタヌキじゃないのか?」と佑一。  早速、ゲームセンターに入って、モグラ叩きをやってみる。 見事に0点。 「どうせ私は、反射神経無いですよ」 「いや、ここまで外すヤツは凄いぞ!」 「そんなこと言う人、大っ嫌いです」

次に、通りかかったのは、栞と佑一が初めてであった場所。 佑一とあゆに出会ったここが、思い出の場所だという栞。 「思い出という程、時間が経っていないぞ」と言う佑一に、 「私にとっては、大事な思い出です。 思い出に時間は関係ないです。 その人にとって、どれだけ大切だったか、それだけだと思います。」と言う。 
栞の”もうひとつのお気に入りの場所”に辿り着くと、栞は佑一に向かって雪玉を投げた。 「お嬢さん、やっちゃいけないことをやってしまいましたな」と、二人で雪合戦が始まった。  そして、雪だるまもつくった。 栞は、佑一の似顔絵を描く。 「ん・・・ 正直に言っていいか? お前は、あまり似顔絵に向いていないな。」 「普通、そんなこといいませんよ」とちょっと怒った栞。  「じゃ、味のある画だ。 これ、もらって良いか? せっかく描いてくれたんだ。 それだけでも、嬉しいよ。」と言う佑一に笑顔になる栞。

気が付くと夕方になっていた。 「時間いっぱいまで付き合うぞ。」と言う佑一。 「時間いっぱい・・・ ほんとうに、時間いっぱいまで、こうしていられたら、いいですね・・・」と栞。 「佑一さん、もうひとつだけ、行きたい場所があるんです」
栞が行きたかった場所は、学校だった。 栞が自分の教室の入り、自分の席だった机の椅子に座る。 「私、一学期の最初の日にしか、来ていないんです。 新しい学校で、新しい生活が始まる日に、倒れてしまったんです。」と話を始める栞。  「お医者さんには、始業式の日には行くな って言われていたんです。 でも、どうしても叶えたい夢があって。。。 お姉ちゃんと同じ学校に通って、一緒にお昼ごはんを食べて、一緒に寄り道をして、帰ったらその日あったことを一緒におしゃべりする・・・」  「やっぱり、風邪じゃなかったんだな・・・」と佑一。 「嘘を付いてました。 ごめんなさい・・・」と栞。

佑一が家に戻ると、佑一宛に香里から電話が入った。 香里との待ち合わせ場所に向かう佑一。 「話って、なんだ? 栞のことか?」と声をかける佑一。  「私の、私のね、妹よ。 あの子、生まれつき体が弱いの。 あの子、夢があったの。 一緒にお昼ごはんを食べて、一緒に寄り道をして・・・そんな当たり前のことが、あの子の夢だったの。 あと一週間であの子の誕生日なの・・・ 次の誕生日までは生きられないって言われていた。  もうすぐ死ぬのよ。 あの子。 私、あの子のことを見ないようにしていた。 どんどん弱っていくあの子を見ないようにしてた。 もうすぐ、私の目の前から居なくなるって、分かっているから・・・ だから、あの子のことを避けて。  妹なんて居なければ・・・ こんなに辛い思いをするくらいなら、最初から、妹なんていなければ良かったのに・・・」と泣き崩れる香里。 「あの子、何の為に生まれてきたの・・・」 次回 
<姉と妹の無言歌〜lieder ohne worte〜> 



Kanon #17/2007-01-26
<姉と妹の無言歌〜lieder ohne worte〜>


佑一は、暗く沈んだ気持ちで家に戻ってきた。 あゆが顔色の悪い佑一を心配する。 そして、佑一は、自分の部屋に戻り、香里の話を思い出していた。 栞は次の誕生日までは保たない・・・ 栞の誕生日は次の日曜日。 ”あの子、あなたと居るときは、笑っている・・・”香里はそう言っていた。 
あゆが心配して、佑一の部屋にやってきた。 「何となく、側に居てあげたくて・・・」 「・・・ありがとう」と天井を仰ぐ佑一。

翌日、香里は学校へ来なかった。 栞も来なかった。 ”落とし物は一緒に探してやることが出来る・・・ 魔物なら一緒に戦うことが出来る・・・ でも、栞は・・・ なぁ真琴、お前はどんな気持ちだった? 残された時間の少ない女の子に、俺は何をすれば良いと思う?”
夜、栞と来た公園に向かった。 その噴水の前に、栞が座っていた。 流れる水を見ながら、栞が子供の頃の話を始めた。 昔、姉の香と一緒に、ここへ遊びに来た。 一緒に、アイスも食べた。 一番楽しかった思い出・・・  「もう少し、時間があれば、佑一さんのこと、もっと好きになっていたかもしれません。 誰のことも好きになってはいけないのに・・・」と栞が俯く。 「佑一さんには、謝らなければならないことがたくさんあります。 感謝したいこともたくさん・・・」 
佑一は、姉妹がお互いに避けあっていることを気にしていた。 しかし、栞は、姉を避けることが自分が姉のために出来ることだと答えた。 そして、栞は佑一にお願いをする。  「佑一さん、私を普通の女の子として扱ってください。 佑一さんと居ると、戻れるんです、楽しかったあのころに・・・ 学校に通って、みんなと一緒にごはんを食べて、帰りはみんなと一緒に商店街で遊ぶ・・・ できれば、私の・・・お兄ちゃんみたいに・・・」 「わかった。」と答える佑一。

別れ際、佑一は栞に聞く。
「栞! ほんとにもうどうしようもないのか? 病気が治る方法とか、無いのか?」と。
「奇跡でも起きれば治るかもしれませんけど、起きないから奇跡って言うんですよ」と答える栞。

家に戻った佑一。 あゆが佑一の帰りを待ちながら机で寝てしまっていた。 「待っていたのか・・・」とあゆを抱え上げると、部屋に運んであげた。 
翌朝、あゆが怖い夢を見たと言う。 お化けに抱っこされて運ばれていくという夢だったらしい。
昼休み、佑一の教室に栞がやってきた。 栞は、制服を着ていた。 その姿を見た、香里は教室から出ていてしまう。  佑一は、栞と一緒に学食に向かった。 「お医者さんの許可が出たんです。 次の土曜まで、出てもいいって」と言う栞。 その土曜日は、栞の誕生日の前の日。  二人分のカレーをテーブルに運ぶ佑一。 「辛そうですね・・・」と栞。 一口食べて、顔を赤らめて、水を一気のみ。 「私、辛いの駄目なんです。」 「どうして、カレーなんか頼んだんだよ。」 「佑一さんと同じものを食べたかったんです。 明日は、お弁当を作ってきましょうか?」
学校が終わり、「また明日です」と言って手を振る栞の後ろ姿を見送る佑一。 栞は、しばらく歩いて、ふと立ち止まり、大きくため息を付いた。 
夜になり、香里が戻ってきた。 栞は、学校であったことを香里に話そうとするが、「疲れているの」と言っただけで、自分の部屋に戻ってしまった。 

翌日の昼休み、栞は超特大な弁当箱にいっぱいのおかずを持ってきた。 そして、放課後、百花屋でアイスを食べる。  そして、商店街の不思議なぬいぐるみ屋を眺めていた。 その時、香里の姿を見つけた佑一は、香里に声をかけに走った。 「栞と一緒にお茶でも飲もう」と言う佑一に、「私、栞なんて子、知らないわ。」と香里が言う。 
夜になり、栞が楽しそうにぬいぐるみ屋で見たことを話している。 しかし、香里のことが気になって、上の空の佑一。 家に戻って、自分の財布の中身を確認する。 「予算は、これだけか・・・」 

部屋に居ると、あゆが入ってきた。 あゆに、栞への誕生日プレゼントは何が良いか、聞いてみた。 すると、開口一番「たいやき」。 「それは、お前の好みだろ」と呆れる佑一。 「じゃ、お金。 だって、お金があれば、たいやきがいっぱい買えるでしょ!」と笑顔で答える。  「じゃ、モノじゃなくって、栞ちゃんがいちばん喜んでくれることをするとか・・・」 その言葉に、ハッとする佑一。 「栞が喜びそうなことか・・・ そうか、これしかない、俺が栞にしてやれること。」 次回 
<消え去りゆく緩徐楽章〜adagio〜> 



Kanon #18/2007-02-02
<消え去りゆく緩徐楽章〜adagio〜>


佑一の姿を見つけて、後ろからぶつかる栞。 栞の誕生パーティーを開こうと思っていることを、昼休みに栞に告げる。 そして、「・・・栞、午後の授業、サボらないか? 今のうちに行きたいところに行っておこう・・・」と言う佑一。  しかし、栞は笑顔で教室に戻っていってしまった。 
佑一は家に戻ると、名雪とあゆに、栞の誕生パーティのことを話す。 そして、香里にも話をするが、香里は自分には関係ないと言う。 そんな香里に「あいつは今を精一杯生きて居るんだ。 最後まで、栞を妹と認めてやらないのか? なぜ、あいつが毎日ここに来ていたのか知らないのか? あいつは、お前とここで弁当を食いたかったんだ。 待っているからな、来てくれよ!」と言う。 

そして、栞の誕生日の前日の放課後、百花屋でパーティーが始まる。 名雪から苺ジャム。 あゆはたいやき。 クラスメイトはスコーン。 盛り上がっている所に、香里がやってきた。  しかし、香里も栞も、お互いに視線を合わせようとはしない。 無言のまま栞が、香里の皿にケーキを取り分ける。 「良かったら食べてください。」と栞。 「ありがとう。」と香里が応えるが、雰囲気はぎこちない。  その雰囲気を察して、北川が踊るぞ!と場を盛り上げる。 
パーティーが終わり、店の前で盛り上がっている輪からちょっと離れたところに立っていた香里が漸く口を開いた。  「栞は・・・ 栞は私の妹。」 その言葉に栞にも笑顔が戻る。 「相沢くん、妹をお願いね。」そう言うと、香里は栞と佑一を残して、他のメンバーと一緒にその場を去る。 
その後、栞と佑一は、二人で色んな所を回って居るうちに夜になってしまった。 「あの佑一さん、手をつないでもらっても良いですか?」 最後に行き着いたのは、噴水のあるあの公園、

「わたし、佑一さんにはどんなにお礼を言ったらいいのか、わかりません。 佑一さんは、強い人ですね。」
「大したことはしていない。 強いのは、栞のほうだ。」
「そんなこと無いですよ。 私、自分の手首を切ったことがあるんです。 佑一さんと出会ったその日の夜に・・・」と栞は自分の左手首を見ながら言った。
  「あの日の夜のこと、私、覚えています。。。 電気の消えた自分の部屋で、何も聞こえなくて、何も考えられなくて・・・ この世界に一人だけ取り残されたような感覚・・・ 自分だけが場違いな場所に迷い込んでしまったような・・・」 
暗い部屋の中で、カッターナイフの刃を出し、自分の左手首に付き当て、躰を鎮めようとしたとき、
「その時、ふと、笑い声が聞こえたような気がして・・・ それが、昼間であった人たちの笑い声で。 あの楽しそうな声を思い出して、今の自分がどうしようもなく惨めで、、、 本当に久しぶりに笑って・・・  次の誕生日まで生きられないって、お姉ちゃんに教えられたときにも流せなかった涙が流れて、笑っていて流れた涙が止まらなくて、自分が悲しくて鳴いていることに気づかなくて・・・  そして、一頻り笑ったら、もう、切れなくなっていました。 ・・・もしかすると、これが奇跡だったのかもしれませんね。」
「・・・それが栞の強さだ」
「弱い人間なんです。」
「だれだって人に縋らないと生きていけないんだ。 起きる可能性があるから、”奇跡”って言うんだ。 もし、”奇跡”が起こるなら、学食で昼飯おごるからな・・・」
「分かりました。 約束します。 ・・・佑一さん、今日は楽しかったです。 あの喫茶店、もう一度、行きたいです。 それから、商店街を一緒に歩きたいです。  学校でも、新しい友達が出来ました。 今度、一緒に遊びに行こうって誘ってくれたんです。 行きたい場所、やりたいこと、まだたくさんあるのに・・・ 私、たぶん、死にたくないです。  ほんとは、こんなふうに誰かと仲良くなってはいけなかったのかもしれません。 だって・・・その人にお姉ちゃんと同じような思いをさせたくはないですから・・・」
「俺は、栞と会えて良かったと思っているぞ。」
「私、笑っていられましたか? ずっと、ずっと、笑っていられることが出来ましたか?」 「・・・ああ。大丈夫だ。」
あと2分で午前零時。
「もうすぐ16歳です。」
そして、佑一がプレゼントを差し出す。 それは、スケッチブックだった。 そして、佑一の頬のキスをする。
栞は、何か暖かいものを買ってくる、と言って走っていった。 しかし、栞の戻りが遅いと気づいたときには、もう辺りには栞の姿は無かった。  そして、自販機の前に、<ほんとうに ありがとうございました  そようなら>とかかれたスケッチブックが置いてあった。 次回 
<消え去りゆく緩徐楽章〜adagio〜> 



Kanon #19/2007-02-09
<ふれあいの練習曲〜etude〜>


「もうすぐ、冬休みも終わりだね。 帰っちゃうんだよね? また来年もまた来る?」と、佑一との別れを寂しがるあゆが言う。 佑一は、振り返って、あゆの手を取り、指切りをしてあげる。  そして、あゆが大事に胸に抱えている小さな天使のぬいぐるみを見て、佑一が言う。  「その人形は、持ち主の願いを3つだけ叶えてくれる不思議な人形なんだ。」
「だれが、叶えてくれるの?」とちょっと嘘臭いと思っているあゆ。
「俺! 俺に叶えられない願いはダメ。 ちなみに、俺は貧乏だぞ。」と佑一。
それならと、あゆは一つ目の願いを言う・・・
「ぼくのこと、忘れないでください。 冬休みが終わって、自分の街に帰っても、時々で良いから、思い出してください。 ”そういえば、雪の街で変な女の子がいたなぁ”って、それだけでも良いから思い出してください。 それが、一つ目の願いです。 ・・・ってのは、どうかな?」
「約束する。 俺は、あゆの事は忘れない。 また、来たときは一緒にたいやきを食べよう。 その時のたいやきは、サービスだ!」
「うん!」あゆが大きく頷く

夜、佑一は、そんな事を思い出しながら、ベランダに出て雪を見ていた。 そこへ、あゆも出てきた。  あゆは、自分のしているカチューシャを取り、それが佑一からの贈り物だったことと、 その時の佑一の励ましがあったからこそ、今の自分が存在できることを話した。 
翌日は、名雪の駅伝大会。 その応援の帰りに、名雪と佑一は百花屋で、お茶する。  その時、佑一は、名雪に、好きな奴とか居ないのか?と聞いてみた。 名雪は、 ずっと昔。 小学生の頃には居たよ。 ふられちゃったけど・・・ その人には好きな人が居たみたい。 今でもその人のことが好き。 一途なんだよ。」と答える。  帰り道、駅伝で優勝した名雪の為に、何か買ってやるぞ という佑一。 そして、名雪が立ち止まったのは、小さな雑貨店。 そこに置いてあった、赤いビー玉を手に取り、 「これがいいな」と言う。 そのビー玉を夕陽に透かして喜ぶ名雪を見て、佑一が「お前も、あゆに負けず変なヤツだな」と言う。  ”あゆ”という言葉に、名雪が足を止めた。 「佑一。 あんまり、あゆちゃんのこと、困らせちゃダメだよ。 だって、あゆちゃんは・・・・」と言いかけて再び歩き出した。

昔、佑一はあゆを連れて、丘の林に行ったことがあった。 そこにある大きな木が、佑一にとっての秘密の場所。  その木を見たあゆは佑一に、しばらく木に背を向けて居るようにお願いする。 そして、だいぶ時間が経ち、やっとあゆが振り返っても良いよの合図をする。  振り返った佑一は、あゆが木の枝に登っていたことに驚く。 「風が気持ちいい・・・ 綺麗な街・・・」と夕陽の染まる街を見下ろしてあゆが言う。
断片的な記憶の夢を見て起きた佑一は、またベランダに出る。 すると、あゆも出てきた。  佑一は、あゆに、7年前の事を覚えているか聞いてみたが、あまり覚えていないと言う。  しかし、 「7年経っても、カチューシャはここにあるし、佑一くんはぼくの目の前にいる。 これって、凄いことだよね!」 と嬉しそうなあゆ。

夕方の駅前のベンチ。 あゆが「あのベンチ、覚えている?」と言う。  二人でベンチに座る。 
「・・・こうしていると、昔のことを思い出すね・・・ お母さんがいなくなって、ひとりぼっちで泣いているぼくに、声をかけてくれたんだよ。  ・・・佑一くん。 目の前で、大切な人を失ったこと、ある? ぼくは、あるよ。 どうすることもできなかった。 自分がどうしようもなく無力な子供なんだって・・・ イヤという程、思い知らされた。  ぼくに出来たことは、大切な人のことを・・・お母さんの事を、声がかれるまで何度も呼ぶことだけだった。 もう、あんな思いはしたくないよ・・・ 佑一くん、そんな経験ある?」 あゆの頬に涙が伝う。 
「俺は・・・」真琴のこと、舞の事、栞の事、佑一の脳裏を浮かぶ。 そして、「栞は・・栞はもう・・・」と声を詰まらせ、立ち上がり歩き出す佑一。 
後を追うあゆ。 「あるんだね。 佑一くんにも・・・」
「佑一くん。 ぼくの顔、見ないでね・・・ 涙で、ボロボロだから・・・ だから、目を閉じて・・・ ぼくも目を閉じるから・・・」 次回 
<別れの夜想曲〜nocturn〜> 



Kanon #20/2007-02-16
<別れの夜想曲〜nocturn〜>


「俺は、あゆことが好きだ。 あゆは俺のことが好きか?」
「ぼくも佑一くんのことをすっとずっと好きだったよ。 佑一くんがぼくのことを好きでいてくれるのなら、ぼくはずっと佑一くんのことを好きでいられると思う・・・ よく分からないけど、きっとそういうものなんだろうって、ぼくは思うよ。」
「7年間待ったんだから、これから7年分取り戻さないとな」


あゆと佑一が一緒に家に戻ると、名雪が秋子さんの手伝いをしていた。 名雪と秋子さんが夕食の準備をしている間、あゆはお風呂に入る。 バスタブに浸かりながら、佑一との唇の感触を思い出している自分に恥ずかしさが込み上がる。 
7年前のあの日、佑一の帰りの日が近づいてきた夕刻。 丘の上の木に登って、あゆが街を見下ろしている。 あゆは、佑一にもらった天使の人形を取り出し 「あと二つお願いが残っているよね? ほんとに叶えてくれる?」と聞く。 そして、あゆは、最後の願いを、「だったら・・・」

学校が終わり、駅前のベンチに座っているあゆを迎えに行く。 探し物を探しに一緒に商店街へ向かう。 「ぼく・・・いいよ。 手、つないでも。 これで、ちょっとは温かいよね?」とあゆの手を佑一の手に近づける。  暗くなるまで探し続けても、結局見つからなかった。 「ぼくの探し物は、幸せだと、見つからないのかもしれない・・・ だから、今は無くても、かまわない。 必要になったときに、また探せばいいのかもしれない。」
ふと佑一が、なぜあゆの一人称が"ぼく"なのか気になって聞いてみた。 そして、試しにあゆに"俺"と言ってみるように仕掛ける。  ちょっと躊躇して「えっとぉ・・・ 俺、月宮あゆ。」 「( ゚∀゚)アハハ八八ノ\ノ\ノ\ノ \/ \ / \」爆笑の佑一。  ちょっとバカにされた気分で怒ったあゆに、今度は、"わたし"と言ってみるように仕向ける。 「これから先、困ることあるぞ。 就職活動とかで、<うぐぅ。ぼく、あゆ>なんて言ったら、一発で落とされるぞ。」と脅す。  「それじゃ、一回だけ。 わたし!!」 「・・・うーん。 イマイチ、面白くないな。」



その夜、あゆがベランダ伝いで佑一の部屋の前にやって来た。 「会いたかったんだもん。 一人じゃ、心細くて・・・」というあゆ。 ふたりで、ベランダに出て、星空を見上げながら話をする。  そして、翌日にあゆが佑一を森の学校に連れて行くことを約束した。

翌朝、佑一は出勤する秋子さんと一緒に登校した。 その途中、「佑一さんは、7年前のこと、覚えていないんですか?」と尋ねる秋子さん。 佑一は良く覚えていないと答えた。  「木が一本切られただけで・・・」と秋子さんが呟く。
放課後、名雪が佑一を誘いに来たが、「わるい。俺はこれから"学校"だ。」と言って、駅前のベンチで待っているあゆのところに向かった。 
「ねぇ佑一くん。 もし、ぼくの初恋の相手が佑一くんだって言ったら、どうする?」
「すぐに取り消してもらう。」
「どーして!」
「初恋は実らないって、言うだろ」と佑一が頬を赤らめる。
「もしかして、恥ずかしいこと言っている! 顔が赤いよ、佑一くん! で、佑一くんの初恋の人って、どんな人?」とあゆが聞く。
「良く覚えていないけど、年上の人に憧れていた気がする・・・ その後で、なにか悲しいことがあったような・・・」
"悲しいこと"という言葉に不安そうな顔になるあゆ。 そんなあゆを見て、佑一が「あゆ。 今は、幸せか?」と聞く。  「うん。 幸せだよ。 でも、時々、不安になる。 幸せなことが、怖い。 怖くて、不安で。 目の前の現実が、実は夢なんじゃないのかって・・・」
「今は7年前とは違う。 冬が終わって、雪が溶けて春になっても、俺はこの街にずっといる。 あゆのすぐ側に居る。」

あゆの通っている学校に向かう。 森の奥へと進んでいく。 「ほんとうに、こんな所にあるのか?」と言う佑一に、「本当にあるもん!」と自分に言い聞かせるように言うあゆ。  だんだんと道が険しくなってきた。 「間違いないよ。 今日だって、ちゃんと出席して・・・」 あゆが先を進む。 そして、山頂が見えてきた。 「ほら! ここが、ぼくの・・・・」とあゆが指さす先に見えたものは、1本の切り株。  <木が一本切られただけで・・・>佑一の脳裏に今朝に秋子さんが言っていたあの言葉が蘇る。 あゆは、あると信じていた学校が無いことに気が動転する。 「だって、ぼく、ここにいるよ! だったら、どうして・・・」と切り株に近づく。  「ぼく、ここに居たらいけないの? 嘘! 嘘だよ!! そんなの嘘だよ!」と自分の背負っていたリュックをおろし、中身を確認する。 そして、そこには、なにも入っていなかった。  佑一があゆに駆け寄り、「あゆ! どうしたんだ? なにがあったんだ!」と聞くが、あゆは、「ぼく、探さないと・・・」と言い残し、リュックをその場に投げ捨てて、来た道を戻り始めた。  その後を佑一が追う。 日も暮れて、暗くなった。 あゆは、必死に雪に覆われた地面を手で掘り返していた。  「あゆ! 何やっているんだ?」
「・・・探し物、だよ。」 一心不乱に手で地面を掘っているあゆ。
「ここに埋まっているのなら、あした、明るくなってから、探そう」と説得する佑一。
しかし、あゆは、「ダメだよ。 だって、夜は、明けないかもしれないよ・・・」と頬に涙を伝わす。 その切羽詰まった様子に、佑一も一緒に、地面を掘る。 
色んな所を掘ってみても、何も見つからなかった。
「ゴメンね。佑一くん。 もう、会えないと思うんだ。 せっかく、再会できたのに・・・ 7年ぶりで会えたのに・・・ ほんとにごめんね。」
佑一が振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。 
 <ごめんね・・・佑一くん>

次回 
<君のいない輪舞曲〜ronde〜> 



Kanon #21/2007-02-23
<君のいない輪舞曲〜ronde〜>


「だったら、二つ目の願いは・・・」と木の枝に座って、天使の人形を空に掲げるあゆ。  「今日だけ一緒に学校に通いたい。 ここを二人だけの学校にして、一緒にお勉強をして、給食を食べて、一緒にお掃除をして・・・ そして佑一くんと一緒に帰りたい。 こんなお願い、ダメかな?」
「今からここは学校だ。 厳しい校則もない、制服もない、自由な学校だ。 もちろん宿題もテストもなし。 休みたいときは休んで良いし、好きなときに来て好きなときに帰っていい。」
「良い学校だね! それなら・・・給食は毎日たいやきが出るんだよ!」
「また、この学校で会おうな! 今度、俺がこの街に来たときの待ち合わせ場所。」
「学校で待ち合わせ! 約束、だよ!」

”あさー あさだよー 朝ご飯食べて 学校いくよー”という名雪ボイスの目覚まし時計で目を覚ました佑一。 やっぱり、あゆは居なかった。  佑一は、あゆの事でかなり気を落としている。 それを気遣う秋子さん。 
学校の講義も身が入らず、窓の外を見ながらため息をつく佑一。 授業は、コペンハーゲン解釈の事をシュレディンガーの猫を使って講義している。  それは、生きている状態と死んでいる状態が同時に存在している。  佑一にとって目の前から消えたあゆの存在は、生きているし同時に死んでいる状態。
昼食は、名雪と一緒にとる。 あゆの連絡先も分からないと俯きっぱなしの佑一。 そんな佑一を見て、名雪は、「ほんとうに、あゆちゃんの事が好きだったんだね・・・」と呟く。
放課後、佑一は、あゆが居そうな場所を探しに行ってみる。 街のたいやき屋さん、森の学校、、、 そして最後に辿り着いたのは駅前のベンチだった。 しかし、そこにも、あゆの姿は無かった。  名雪が佑一に声をかける。 佑一は、このベンチがあゆとの待ち合わせに場所だったことを言う。 佑一の後ろに見えるベンチは、名雪にも思い出があった。 

名雪と佑一は、その後、百花屋でお茶を飲みながら、あゆの事を話す。 「探し物は見つかったの?」と聞く名雪に、「考えて見れば、おかしなことばかりだ・・・ 俺は、どうして7年前のことを思い出せないんだ」と元気のない佑一。  そんな佑一を何とかして元気づけようとする佑一。 「ファイト、だよ! 佑一!」

家に戻り、落ち込みっぱなしの佑一をみて、「出来るだけ励ましてあげましょうね。 私たちは、家族なんだから、支え合って行かないとね」と言う秋子さん。 「そうなんだよね。 私たちは、家族なんだよね!」と自分に言い聞かせるように言う名雪。
部屋に戻った佑一は、あゆの残していった鞄を見て、ため息をつく。 そのあと、名雪が一緒に宿題をやろうと入ってきた。  名雪は、さりげなく7年前にも同じように一緒に宿題をやったことを話してみるが、佑一は覚えていない様子だった。 

その夜、佑一は、また昔の夢を見た。 夜の森で、あゆの手を引きながら歩いている。 森を抜け、小道に出た所で、あゆが小さなガラスの瓶が転がっていることに気づく。 あゆは、これで、タイムカプセルを作ろうと言い、 あゆはポケットから天使の人形がを取りだした。 しかし、まだ願いは一つ残っている。 あゆは、「これは、未来の自分が、他の人の願いを叶える為に送ってあげたいんだよ」と答えた。  そして、あゆは佑一が帰る前の日に、もう一度会うことを指切りをして別れた。  翌朝、登校途中で、崩れかけた雪ウサギを見つけた名雪。 雪ウサギの前にしゃがみ、その崩れかけた姿を見て、悲しい思い出が蘇ってきた。  「誰が作ったのかな・・・」と雪の形を整え始めた名雪。 遅れるぞ、という佑一に、「でも、可哀想だから・・・」と名雪が言う。  形を整えて、耳を付け直した。 しかし、目が一つ足りない。 名雪は、鞄から、以前に佑一に買ってもらった赤いビー玉を取りだした。  「これ、使っても良いかな?」 頷く佑一。 雪ウサギの右目にビー玉を入れる。 「ちょっと歪だけど・・・しょうがないよね。 佑一、雪ウサギを見て、何か思い出さない?」と佑一に恐る恐る聞いてみる名雪。  しかし、佑一が思いだしたのは、”病気の母親のために雪ウサギを作った女の子こと”つまり舞の事だった。 

放課後、名雪と北川と一緒に、”あゆの探し物”を見つけるために、森の小道を掘り返しに向かった。 色んな所を掘っても、なかなか出てこない。 夕方になって、そこら中、穴だらけになってしまった。  その後、北川のシャベルにヒットがあった。 慎重に土をどかし、手に取ると、あの時のガラスの瓶だった。 そして、中には、天使の人形もあった。 

夜、家に戻り、名雪に感謝する佑一。  そして、名雪の後ろ髪を見て、かつて名雪が三つ編みだったことを思い出した。 「どうして、三つ編みを止めてしまったんだ?」と聞く佑一。 「・・・どうしてかな」と答える名雪。 

翌朝、珍しく名雪に起こされる佑一。  朝のトーストに苺ジャムを乗せながら、「真琴もあゆちゃんも居なくなっちゃたから、お母さんが寂しがっている・・・ 佑一は、居なくなったりしないよね?」と名雪が佑一に聞く。  「当たり前だろ。 俺が帰れるのは、この家だけだ。」 そんなヒソヒソ話をしている二人を見る秋子さん。 名雪は、秋子さんに、「今日の晩ご飯、なに?」と聞く。 「決まってないけど、何か食べたいもの、ある?」と秋子さん。  「苺のケーキ!」と即答の名雪。 「分かったわ。 ケーキを買っておきます」と笑顔の秋子さん。

登校途中、昨日直した雪ウサギが、まだ残っていた。 「まだ残っているよ!」と雪ウサギに近づく名雪。 その光景を見て、佑一は、7年前のことを思い出した。 名雪の手から雪ウサギを叩き落とした光景がはっきりと浮かんだ。 
教室に入り、7年前の事を思い返していた佑一。  <7年前の帰る日の前日、駅前のベンチに座って泣いている自分に、三つ編みの名雪が声をかけてきた。  名雪は、雪ウサギを作って、会いに来た。 冷たい雪ウサギを大事に手のひらに乗せているので、指先が赤くなっている。 そして、名雪は、ずっと自分の事が好きだったことを告げた。  俯きっぱなしの自分が泣いていることに気付いた名雪が近づいてきた。 どうして泣いているのか?、と。  そして、立ち上がって、名雪が持っていた雪ウサギを地面に叩き落とした・・・> 叩き落として雪ウサギを壊した記憶が蘇った佑一。 その時、教室のドアが突然開き、 教員が名雪と佑一を廊下に呼びだした。 

「落ち着いて聞いて欲しい・・・ お母さんが交通事故に遭われて、救急車で運ばれたそうだ・・・」

次回 
<追想の交響曲〜symphony〜> 



Kanon #22/2007-03-02
<追想の交響曲〜symphony〜>


学校の先生が運転する車で、搬送された病院に急ぐ名雪と佑一。 名雪は俯いたままで、握りしめた手をじっと見ている。  その途中、事故現場の横を通りかかった。 警官が交通整理をし、その後ろには、ケーキの残骸や秋子さんのバッグが、無惨にも散らばっている。  その光景にずっと抑えていた感情が溢れてきた。

「全力は尽くします。しかし、今の状態が続けば、命の補償はないことをご承知下さい。」 集中治療室前で、医師に告げられる。 待合室でも何も話すこともなく俯きっぱなしの名雪。  そのまま朝を迎えた。 名雪と佑一は、いったん家に戻り、佑一が名雪のために朝ご飯を作る。 名雪は、朝食に手を付けようとはせず、ずっと黙っていが、しばらして、「・・・わたしのせいだ。 わたしが、苺ケーキ食べたいなんて言ったから、お母さん・・・」とか細い声で言うと、立ち上がり自分の部屋に引き籠もってしまった。  佑一は、名雪の部屋の前に朝食を置き、励まし、学校へ向かった。 
学校につくと、北川に声をかけられる。 言葉少なく答える佑一に、頑張れ と肩を叩く。 学校の帰り道、昨日名雪が作った雪ウサギが目に入る。 片方だけ、目の大きな雪ウサギ。 それを見ると、どうしても、7年前に自分が名雪にしたことを後悔してしまう佑一。  家に戻り、名雪の部屋のドアをノックする。 朝置いていった朝食には、手を付けていないようだった。 「帰る途中、病院に寄ってきた。 容態は変わっていないようだ・・・」 ドアを開けようと、ノブに手を回しても、鍵がかかっているようだった。  ドアを強く叩き名雪の名前を呼ぶ佑一。 「やめて! お願い、だから、やめて・・・」という声が聞こえ、手を止める佑一。 そして、自分の部屋に帰り、引き出しの中にしまってあった、真琴の鈴とプリクラを手に取る。  「こんなとき、コイツが居てくれたら、明るく盛り上げてくれるのかな・・・」と呟く佑一。 再び、佑一の脳裏に、7年前の光景が蘇る。 「どうして、あの時、俺は泣いていたんだ? 真琴のことは思い出した。 舞のことも、名雪のことも。 まだ何か忘れている。 何か、大事なことを・・・」


朝になったが、名雪はまだ、部屋に閉じ籠もっている。 佑一は、食事を置き、病院に向かった。  そして、あの雪ウサギが崩れかかっているのを横目で見ながら、学校に寄ってきた。 暗くなったころ家に戻る。 名雪の部屋の前に置いてあった食事が少し減っていた。  「名雪、落ち着いたか?」とドア越しに声をかける佑一。 ゆっくりとドアノブを回すと、ドアが開いた。 暗い部屋の片隅に、名雪が膝を抱えて座っていた。 名雪は、声をかけようとする佑一を拒むように、「出てって・・・」と言った。

「出てって、佑一。 わたし、誰とも会いたくない。 ひとりで居たいから・・・」と名雪。 佑一は、「久しぶりだな名雪。」と明るく振る舞う。 「俺の作ったメシは美味かったか? 秋子さんのメシに比べたら・・・」と自分が言ってはいけないこと言ってしまった事に気づく佑一。  そして、「このまま、ずっと、自分を責め続けるつもりか?」と名雪に聞く。 そして「秋子さんは、きっと助かる!」と続けた。 「・・・奇跡って、起こせる?」と名雪が言う。 
「わたし、ずっと、お母さんと一緒だったんだよ。 ずっと、何年も、この街で。  わたし、お父さんの顔を知らないけど、お母さんが居たから寂しくなかった。 今まで頑張って来れた。  それなのに、わたしのせいで・・・ わたし、ひとりぼっちだね・・・ 」と声を詰まらせる名雪。 
「ひとりぼっちじゃない。 学校に友達が居る。 陸上部の仲間もいる。 俺もいる。」と佑一が言う。 
「佑一も? 7年間もわたしのこと、忘れてたのに?」と名雪が言い返す。 その言葉に佑一の顔が曇る。 
「嘘つき・・・ 手紙の返事だって、一度もくれなかったね・・・ この間再会したとき、佑一に会うことが怖かったんだよ。 わたしのことを忘れているんじゃないかって・・・」
佑一は、コートのポケットから、雪ウサギの目になっていた赤いビー玉を取り出し、「7年前のことを思い出した。 ・・・雪ウサギのこと、悪かったな。 許して、くれないか?」と名雪に近づいた。  「せめて、ここに一緒にいるくらい、いいよな?」と言う佑一。 しかし、名雪は、「だめ・・・ だめなんだよ。」と答える。 そして、「わたし、もう笑えなくなっちゃった・・・」と涙を流し、「ずっと、お母さんと一緒だったんだから! 出てって!」と声を荒げる名雪。

自分の部屋に戻った佑一。 天井を仰ぎ、「ずっと昔にも、こんなことがあった・・・ だれかが、大けがをして、俺は、何も出来なくて・・・」と意識が遠くなってきて、再び夢を見た。

7年前。 森の木の場所で、佑一を待っているあゆ。 遅れてやって来た佑一は、手に紙袋を二つ握りしめていた。  あゆの姿が見えてくると、そのうちの一つ紙袋を自分の懐に隠した。 「佑一くん。 遅刻だよ!」とあゆが言う。  そして、もう一つの紙袋をあゆに差し出した。 中身は、たいやきの給食。 たいやきを食べながら、またここで会うことを約束するあゆと佑一。
そして、夕方になり、あゆが、いつものように木に登って、夕陽に染まる街並みを見下ろしていた。 下に居る佑一は、懐に隠していた紙袋を出して、あゆが降りてくるのを待っていた。  その時、突風が吹いた。 木の上でバランスを崩しているいるあゆ。 佑一が見上げた瞬間、あゆの躰は後ろに倒れ、そのまま、背面から地面に叩きつけられた。 

「佑一くん・・・ 痛いよ・・・」虚ろに目を開け、力無く声を出すあゆ。
「しゃべるな。 今、病院、連れていってやるから!」
「痛いよ・・・ 落ちちゃったよ。 ぼく、木登り、得意だったのに・・・ あれ? なんでだろ。 痛くなくなった・・・ ぼく、どうなるのかな?」
「痛くないのなら、絶対に大丈夫だ!」
「・・・うん。 あれ? 躰、動かないよ・・・」
「動かなくていい。 俺が連れて行ってやるから」
「でも、動けないんじゃ、遊べないね・・・」あゆの目から涙が溢れる。
「佑一くん。 また、ぼくと、遊んでくれる?」
「もちろんだ! あゆに渡すものだってあるんだ」
「うれしい・・・ 約束だよ・・・ ・・・指切り・・・」とあゆが手を動かそうとしても動かない。 
「動かない。 手が動かないと、指切り、出来ないね・・・」とその手の下の雪が赤く染まっている。 
その手を握り、自分の小指にあゆの小指をかける佑一。 「これで指切りだ。 ほら、約束したぞ。」
「約束、だよ・・・」
「ほら、指を切らないと、指切りにならないぞ。 切るんだよ、指を・・・ 一緒に、切らないと、指切りにならない・・・」とあゆに必死に言い聞かせる佑一。 
しかし、あゆの指は動くことなく、あゆは目を閉じた。

夢の終わりとともに、絶句する佑一。 全てを思い出した。 息づかい荒く、あゆのリュックと天使の人形を握りしめ、部屋を飛び出した。  玄関を出ると、心配して見舞いに来た北川とぶつかった。 その北川に、「俺。思い出したんだ・・・ あゆは。。。 名雪を頼む・・・」と言い残し、走り去る佑一。 

激しく吹雪きはじめた。 その中を、あゆとの待ち合わせ場所であった森の木に向かう佑一。 そこに、あゆの姿がある訳でもなく、必死にあゆの名前を叫ぶ。  そして、あゆを探して、雪の中をさらに奥へと突き進む。 そして、辿り着いたのは、ものみの丘。 そこに跪き力尽き倒れる佑一。  「このまま、じっとしていれば、アイツの所に、行けるのか・・・ ごめんな、みんな・・・」佑一の意識が吹雪の中に薄らいでいく。 
吹雪の音の向こうから、雪を踏みしめる足音が聞こえたような気がした。 その足音は佑一の所で止まり、優しく佑一を覆う。 そして、佑一の目の前が明るい光で包まれた。 

<あゆ、これ、開けてみろ>と紙袋を差し出す佑一。
<これ、カチューシャだよね! もらっていいの?>と嬉しそうに紙袋を開けるあゆ。
<そうだ! 今度、佑一くんと会うときは、これを付けていくね!>
<約束だぞ>
<うん! 約束!> 次回 
<茜色の終曲〜Finale〜> 



Kanon #23/2007-03-09
<茜色の終曲〜Finale〜>


雪道に倒れ込んだ佑一の目の前で一台の車が止まった。 車から一人の女性が降りてくる。 「・・・真琴?」
佑一が、目を覚ますと、見覚えのない部屋でベッドの上で寝ていた。 仕切の向こうで火に鍋をかける音が聞こえ、起きあがる佑一。  「ごめんなさい。佑一くん。 起こしちゃった? いま、ミルクを温めているから。」という女性の声が聞こえてきた。  そして、佑一の前に現れたのは、みくる・・・ いや 真琴によく似た女性だった。 「相沢佑一くん・・・よね?」と言う。  佑一は、なぜ彼女が自分のことを知っているのか、なかなか理解できずにいた。 しかし話をしていくうちに、この人が、”沢渡真琴”であることに気づいた。

水瀬家では、留守番を頼まれた北川が、香里を呼ぶ。 香里は名雪の部屋に向かった。 「名雪。お母さん、大変だったわね・・・ 開けてくれない?」とドアをノックするが、 名雪は、誰とも会いたくないというだけ。 そんな名雪に、香里は自分の妹の栞のことを話し始めた。 「栞はね、いま入院しているの。 もうすぐ、死ぬわ。 わたしは、それが辛くてずっと目を背けてきた。 あなたや相沢くんが居なかったら、今でもそのままだったかもしれない。 ・・・あなたには、わたしと同じ道を辿っては欲しくない。  心を閉ざして、悲しみに浸って、周りの人を苦しめるようなことをしてはいけない・・・ しっかりして。」と励ます香里。 名雪は、香里の言葉を聞きながら、じっと、床に転がっていた赤いビー玉を見つめていた。 そして、ふと秋子さんの言葉が聞こえてきた。 ”家族なんだから・・・”

じっと視線を落として、考え込んでいる佑一に話しかける沢渡さん。 「どうしたの?」  「俺は、ずっと昔のままです。 あのころと全く変わっていない。  誰かが苦しんでいても何もしてやれない。 ただ黙ってみてるだけ。  名雪にも、栞も、舞も、真琴もずっと待っていたのに何もしてやれない。  それに、あゆも。 あゆも、ずっと待っていたのに、何もしてやれない。 何も気づいてやれなかった。 約束したのに、そのことすら忘れて・・・」  自分を責める佑一に、沢渡さんがそっと手を添える。 「悩んだり苦しんだりして、強く優しくなれるんじゃない? もし、約束をしているのなら、ちゃんと守ってあげなくちゃね。」と優しく佑一を励ます。

朝になり、置きメモが置いてあった。 お腹が空いていたら冷蔵庫に入っているものをチンして食べて と書いてある。 冷蔵庫を開けてみると、そこには、肉まん。 「まさかな・・・」と佑一。  佑一は、その後、再び森の学校に向かった。 その途中、あゆとの思い出が溢れてくる。 そして、辿り着いた場所、そこには、あゆの姿はない。 佑一は、約束、したよな・・・」と空を仰ぐ。

普段とと変わらない朝。 名雪ボイスの目覚ましで目が覚める。 1階に降りると、秋子さんと名雪とあゆのいる朝食。。。 そんな夢だった。 目が覚めると、森の学校の切り株にもたれ座っていた。 すでに、夕方になっていた。  <やっぱり、待っている人が来てくれることが一番うれしいよ> <佑一くんがずっとぼくの事を好きでいてくれるのなら、ぼくも佑一くんのことを好きでいられるんだと思う> あゆの言葉が浮かんでは消えていく。 「俺は、あゆの事が好きなんだな・・・」と呟く佑一。
「ぼくもだよ。佑一くん。」と切り株の後ろから声が聞こえてきた。 
「じゃ、どうして、もう会えないなんて言ったんだ?」 
「だって、時間が無いから・・・ 今日は、お別れを言いに来たんだよ。」 
「俺は、忘れ物を届けに来たんだ。」 
「見つけて、くれたんだね」
「苦労したぞ。 本当に・・・」そういうと、立ち上がる佑一。 振り返ると、あゆが立っていた。 
「ありがとう・・・」
あゆに、リュックを渡す。 
「本当に、これでお別れなのか? ずっと、この街にいることは出来ないのか?」
「・・・うん」
「そうか・・・ だったら、せめて、三つ目の願いを言ってくれ。 俺に最後の願いを叶えさせてくれ。」
「そう、だね・・・」と一瞬俯いたあゆが、パッと明るく切り返す。 「お待たせしました! ぼくの三つ目の願いは・・・・」 そして、「佑一くん。 ぼくのこと、忘れてください。 ぼくなんて、最初から、居なかったんだって、そう、思ってください。 ぼくのこと、忘れて・・・」涙で声が詰まるあゆ。
「本当にそれでいいのか?」
あゆは精一杯に明るく「ぼくに、もうお願いなんてないもん。 本当に、もう二度と食べられないと思っていたタイヤキ、いっぱい食べられたもん」
佑一は、あゆを抱き寄せる。 「お前は、まだ子供だ・・・ お前は、ひとりぼっちじゃない。 その願いは、ダメだ。 俺が、お前を忘れられるわけ無いだろ。」
「・・・お願い、決めたよ。 ぼくの、最後の願いは・・・」とその瞬間、あの時あゆの命が消えたように、風があゆの最後の願いをかき消した。 「何て言ったんだ・・・ あゆ・・・」 
「佑一くん。 ぼくのからだ、まだ、温かいかな・・・」 
「当たり前だろ」 
「よかった・・・」と安心してあゆが目を閉じる。 そして、フッと佑一の腕からあゆの温もりが消えた。

夢。 夢を見ている。 また同じ毎日の繰り返し。 終わりのない朝を望んで、そして、同じ夢の中に帰ってくる。 赤くて、白くて、冷たくて、温かくて・・・悲しくて・・・そしてまた同じ毎日の繰り返し。 ずっと前から、何年も前から気づいていた。 終わらない夢を漂いながら、来るはずのない夜明けを望みながら・・・  ぼくは、ずっと同じ場所にいる。 声の消えた雑踏・・・顔のない人が目の前を行き交う。 だれも、たった一人でベンチに座っている子供の姿なんか、気にも留めない。 人を待っている。 来ないと分かっている人。  もう会えないと分かっている人を何年も何年もぼくはずっと待っていた。 繰り返させる夢の中で、来るはずのない夜明けを・・・ だけど。。。。

そして、佑一は、そのベンチに座り込んでいた。 そこへ、名雪が迎えに来た。 「これで、おあいこ、だよ。」と名雪。 「佑一。 わたし、強くなるよ。」と涙を拭う。 「頑張ろう、佑一。 約束、だよ。」 ”約束”。 

夢。夢が終わる日。 雪が、春の日溜まりの中で溶けて無くなるように・・・ 面影が、人の成長とともに影を潜めるように・・・ 思い出が、永遠の時の中に霞んで消えるように・・・ 今、長かった夢が終わりを告げようとしている。  最後に、一つだけの願いを叶えて。 たったひとつの、願い・・・




「ぼくの、願いは・・・」

次回 
<夢の果ての追復曲〜Kanon〜> 



Kanon #24/2007-03-16
<夢の果ての追復曲〜Kanon〜>


たとえば、今、自分が誰かの夢の中にいるって考えたこと無いですか? 夢を見ている誰かは、夢の中で一つだけ願いを叶えることが出来る・・・ 

「あーさー あさーだよー」いつもと変わらない朝を迎える。
テーブルには朝食が並び、「おはようございます」と秋子さんの笑顔。 
栞は病気が治り、また学校に来れるようになった。
舞と佐祐理は、退院して同じ大学を目指す。
それでも、あゆは戻ってくることはなかった。7年前を思い出した佑一の中では、あゆはもうこの世には居ない存在。
「木から落ちた子の名前は、月宮あゆ。 あゆは、この世には・・・」
  しかし、その木から落ちた女の子は、今でも病院のベッドで佑一を待っていた。 その手には、あの天使の人形が添えられている。

夢。 夢を見ている。 大好きな人が側にいる夢。 その人はぼくに話しかける。 色んな話を聞かせてくれる。  7年ぶりに会った、いとこのこと。 人間になった子狐のこと。 毎日、学校の裏庭を訪れる不思議な少女。 お化けと戦う女の子。 そして、夕暮れの街で再会した幼なじみ。
夢。 夢を見ている。 大好きな人の側にいる夢。 繰り返される当たり前の毎日。 そんな夢の欠片が何度も何度も訪れて、心を少しずつ満たしていく。 空から降る雪の欠片が、街を白く染め変えていくように・・・


「たとえばですよ。たとえば・・・ 今、自分が誰かの夢の中にいるって考えたこと無いですか?  夢を見ている誰かは、夢の中で一つだけ願いを叶えることが出来るんです。 夢の世界で暮らし始め